雨 ページ33
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____一瞬、時が止まった様に感じた。
映る景色はスロモーションで、眼前を落下するのは、まるで宝石の様に輝く雨粒。
呆気を取られた先。誰も居ない空間で見つけた
_______傘も差さずに俯く、たった一人の女。
「……、」
彼奴が裏切り者か？
疑心を抱いて引き返そうとも
思わず歪む眉間とは裏腹に、動いちまった足。
近づけば近づく程目に付くのは、そのびしょ濡れの髪や頬。その上ひと目で判る下ろしたて風のスーツや靴は汚れていて
疑りを掛ける低い声は
「____おい手前、こんな所で……」
______俺を見上げるその顔に、呆気なく打ち消された。
驚き見上げた幼い顔。
怪我をしたのか、膝を庇う様にへたり込んだ其奴。揺らいだその瞳は_______泣いていた。
「_____、」
手前が裏切り者か？
何でこんな所に居るんだ
その質問は口には出なかった。
その縋る様な瞳。
今にも漏れだしそうな嗚咽。
バチりと合ってしまった視線のせいで、役目なんて単語は消え失せてしまった
「──ッたく、ンな所で泣いてちゃ風邪ひくぞ」
「……え？」
代わりに出たのは呆れで。
傘を傾け、戸惑う女の腕を引いて立ち上がらせた。
だって仕方ねェだろ
それに此処まで来ちまったんだ。
「今更、…見て見ぬ振りなんざ出来るかよ」
縄張りに居られたら困るッてのもあるけどな_____そう泣かれてちゃ虫の居所が悪いンだよ。
溜息をついて静かに先を見つめた。
そこには止む気配のない雨。
……だから、雨は嫌いなンだ。
何があったか知らねェが_____
女は、静かに俯いていた。
それが、降り続けるであろう雨と交差して_____息を吸って出たのは咄嗟の気まぐれ
「やるよ」
丁度どうするか困っていた傘。どうせ処分する位なら、と
それを頻りに俯く其奴に差し出して、それから遠慮する小さな手に押し付けた。
大体俺には必要のないモンだし。
さっさと帰れと諭せば、返っきたのは弱々しい芯のない答えだった。
「帰りたくないんです」。ぎゅっと傘を握って、矢張り俯く視線の先には_____何かを浮かべる透き通った瞳。
その次には帰る場所なんてない、と吐き捨てられた言葉が雨に埋もれる。
同時に、傘が押し返された
「……、」
そういう事。と、呆れの溜息を混じらせ其奴を見詰めて傘をすり抜けて小さく口を開く
「手前、新人社員か何かだろ」
不器用な声を射止める様に、なよなよした態度の其奴に問いかけた。
こんなの、お節介でも何でもねェ
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にんじんさん。(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます…！ (2019年6月4日 16時) (
レス) id: 13fcb4bada (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あなたもしや…、中也推しですか!? (2019年1月7日 0時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 白井なでしこさん» コメントありがとうございます。ありがたい言葉ばかり並んでおりますね笑とにかくありがとうございます！頑張ります！ (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 月ノ輪さん» ひゃー、お世辞でも嬉しすぎます…。前作もありがとうございます！そのコメントだけで次も頑張れますので期待に応えられるように書いていきますね！コメントありがとうございました！！ (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - ユーナ橘さん» ありがとうございます…！少しでも雨に対する思いが伝わればいいな〜と思います。こちらこそ最後まで読んで頂きありがとうございました！ (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
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