雨 ページ30
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ザアザアと音を立て始めた傘の先
灰色に染まり始めた背景で、バチりと合った蒼い双眼はこの間の_______この傘の持ち主だった。
軽かった脚は一瞬立ち止まって、洒落っ気の無いビニール傘が動揺で揺れた
「何で手前が此処に居るんだ？」
その人は、丸かった目を一瞬で顰めてから直ぐ、私に勘ぐる様な声色で聞いた
“ 何で此処に居る ”
「____い、や、あ……の」
まるで何かを疑う様に。
その闖入者を見る様な視線を向けられ、ハッとして、明確な理由がないまま口を濁した。
“何で”と聞かれちゃ答えられない
理由なんてなしに、何故か此処に_________俯いた先、ぎゅっと握ったのはあの傘だった
「あ、あの、コレ！」
咄嗟の思いつきで突き出したのは
しっかりとしていて、広げれば曇も雨も関係なしに空を包み込んでしまいそうな程大きな黒い傘。
目を細め疑問符を浮かべるその人は、じいっと傘を見つめる
「これを返しに来たんです」
「あ？…………あー、それ」
傘を差し出した奥で、その人は思い出したのか、パッとしない反応をしながら小さな折り畳み傘を差していた。
其の距離３米。
人通りの無いこの場所で辛いのは沈黙だった。
雨だけが地面を打ち付ける
「あ、…あの！？」
少し足を差し出して、そのまま勢いで傘をもう一押し突き出した。
のに、じいっと私を凝視するその人は受け取ってくれない
何だ、何なんだ、人の顔をじっと見て。なんて、次には黒い手が出てきて、弾けた笑いが飛んできた
「はは、いや…何もねェよ。悪ィ、ありがとな」
すっと傘を受け取った後。
何にも無いと云った癖に片手で口元を抑え、やっぱりふはっと笑うその人
「だっ、何なんです！？」
「いやな？手前この間、あーんなに泣いてたのに、今日は清々しいから」
律儀な事する上にンな顔だったのな、なんて。
可笑しそうに、細められた瞳は私を見詰めた
まるで、吸い込まれる様な笑顔に_____
「それ！どう云う意味ですか」
「泣き顔より今の方が善いッて事だよ。この傘、手前にやるッつったのに」
え、なんて。閉口してしまう私。
内心ドキリとした一言を、さらりと、挨拶をするかのように云って退けたこの人は、きっと私よりもずっと大人で。
「……、」
ビニール傘の下で、空になった手をぎゅっと握った。
本当は来る気も伝える気もさらさらなかったのに
この人の事が気になって
「明日もまた、此処に居ますか？」
雨が続けば善いと。
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にんじんさん。(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます…！ (2019年6月4日 16時) (
レス) id: 13fcb4bada (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あなたもしや…、中也推しですか!? (2019年1月7日 0時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 白井なでしこさん» コメントありがとうございます。ありがたい言葉ばかり並んでおりますね笑とにかくありがとうございます！頑張ります！ (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 月ノ輪さん» ひゃー、お世辞でも嬉しすぎます…。前作もありがとうございます！そのコメントだけで次も頑張れますので期待に応えられるように書いていきますね！コメントありがとうございました！！ (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - ユーナ橘さん» ありがとうございます…！少しでも雨に対する思いが伝わればいいな〜と思います。こちらこそ最後まで読んで頂きありがとうございました！ (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
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