曇り ページ20
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「今日は雨ですね」
パタン、と乾いた音を聞いた。
何時もの声に耳をぼんやり傾けて、私は外を見詰めている。
今日の天気は曇りだった。
けれど悲しいかな。夕方から、それは完璧に、何時ものあの時刻に雨は降る。
「天気はもう気にしません!」
私は窓から目線を逸らし、目を伏せて云った。
「何故ですか」なんて、安吾さんと補佐のふたりは何も云わず、ただ、「そうですか」と一言返してくれただけだった。
善いんだ。
今日で梅雨は開けるから。元から潮時だったんだ。丁度善い。
「日外君、出来ますか?」
「勿論ですよ。安吾さん。だって、今日は雨じゃないですか」
私が微笑むと、三人は揃いも揃って顔を歪めた。
これから任務なのに、どうしてだろうか
「そんな…、そんなに悲しそうに微笑まれても説得力が無いですよ」
その一言で頬に触れた。
え?と思わず呆れた笑いが零れた。
いいや、ちゃんと、いつも通り笑ってやった筈だろう。
「今日は張り切ってますよ!」と、何時もの笑顔で。
「…もー、ほらほら!元気に行きますよ!私なんてあわよくばマフィアを逮捕しなきゃなんですから!ね?ほら!」
席を立って安吾さんの頬を掴んだ。ぐりぐりぐり!と解してやる。
後で怒られそうだなあ。なんて、
お願いだから
「…日外くん、」
笑ってよ。
「やめてください、そんな、」
思い出してしまうじゃないか、
だって、今日は雨だよ?私の大好きな雨。
昨日も雨だったから、幸せだろう?私。
「仕事に私情を持ち込むなんてエリートじゃありませんねえ。全く、之だから彼女の居ない安吾さ」
「なんですか?彼女の?」
「ふふ、なんでもないデース!」
先に行ってますね!と扉を元気に開けた。
それから車に向かって走る。
____フリをして、角の壁に背をつけた
ずるずる、と力が抜けていく
お願いだ。
お願いだから、
雨よ降らないで。
仕事中にプライベートは介入ちゃいけないんだ。
だからお願いだ
ふっ、と口から息が漏れた
何故か、安吾さん達は部屋から出てこなかった
いやだな、之だから察しのいい人たちは、
残り五時間。
私は雨を目前にして、仕事を完遂する事が出来るのだろうか
どうか許して。
突き放されても、忘れられない私の事を。
それから二時間。私は頭を抱えて壁際で、蹲っていた。何時から寝てしまったのか。
昨日寝付けなかった分、任務前に少し、休息をとっていた。
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にんじんさん。(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます…! (2019年6月4日 16時) (レス) id: 13fcb4bada (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あなたもしや…、中也推しですか!? (2019年1月7日 0時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 白井なでしこさん» コメントありがとうございます。ありがたい言葉ばかり並んでおりますね笑とにかくありがとうございます!頑張ります! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 月ノ輪さん» ひゃー、お世辞でも嬉しすぎます…。前作もありがとうございます!そのコメントだけで次も頑張れますので期待に応えられるように書いていきますね!コメントありがとうございました!! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - ユーナ橘さん» ありがとうございます…!少しでも雨に対する思いが伝わればいいな〜と思います。こちらこそ最後まで読んで頂きありがとうございました! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
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