純愛ラビリンス【snr】 (ページ2)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:671 hit

偽りページ2

「大丈夫ですか…？」

優しく声を掛けられたものだから

――――つい、嬉しくなってしまった。

せき止めていたものが決壊するように瞳から何か熱い物が零れ落ちた。

「ちょっ…えぇっ…⁉あ…いや…怖いことせぇへんよ…？ただ…ここやと…人おるし……向こうの店で話聞きましょか？」

私はこの人の親切な言葉に甘えてお店で話を聞いてもらうことにした。

彼は金髪のアシンメトリーに銀のピアスをしていて少しチャラそうな見た目をしていた。
でも…やはり人は見た目で判断してはいけないなと思う。

「落ち着きました？」
『…はい。迷惑かけてしまってすみません…』
「ええよ。気にせんくても誰だって泣きたいときはあるんやし。」

この人の優しい言葉にまた涙腺が緩みそうになる。

「泣きたいだけ泣きぃや」

私はこの人に甘えてたまっていたものを吐き出すように泣いた。

彼の名前は

"折原千羅"

というらしい。

私は彼に嘘を吐いた

失恋して感傷的になって

自暴自棄になって

夜遊びに浸っていた

そんなこと言えるわけなかった。

愛に飢えている汚い自分を見られたくなくて

せめて彼だけには嫌われたくなくて

"仕事が辛くて"

それを口実にした。

千羅さんは「よくわかります」と同意してくれた。
でも彼に嘘を吐いていることが苦しくてたまらなかった。

「もう日付変わってもうたし送ってこうか？」

彼とは同い年だったので店を出る頃にはもう打ち解け合っていた。

『いえ、大丈夫ですよ』

そうは言いつつ本当は寂しくてたまらなかった。

――――本当に勝手な妄想だけど彼と会えたことが運命なんじゃないか

そう思ってしまったから…

「遠慮せんの！こんな暗いのに一人で帰ったりしたら悪い男寄ってくるで？」

私は毎日暗い夜(うみ)の中で真珠(あい)を求めて探し回ってる。

彼は優し気に微笑んで私の手を引いてくれた。

私を裏切ったアイツも付き合い始めたころはこんなことしてくれてたんだっけ

幸せな夢の様だった。