十七つ目、幸せは斬られた ページ19
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ある日、彼女の幸せは斬り捨てられた。
新たな剣八の誕生にAは隊士に羽交い締めにされながら見た。
伸ばした手は届かず、命の恩人の血はAの頬を濡らした。
十一代目剣八と小さな女の子はどこかに行き、残された隊士たちは泣き崩れる彼女をただ見ていた。
「隊長!しっかりしてください!今卯ノ花隊長の所に運びますから!!」
入隊してからも成長した身体は平均より高い身長になった。それでも大柄な
ズルズルと鬼巌城の足は引き摺り、重さで身体は
周りから「もう諦めろ」「手遅れだ」と言われても諦めずただ進んだ。視界に映る腕はピクリとも動かない、人形のようにぷらぷらと揺れるだけ。
ただ恩返しがしたかっただけ。死にかけていた自分を救ってくれたこの人に生涯をかけて恩を返したかっただけなのだ。
「貴方が死んだらわたしはどうすればいいの・・・!」
周りの視線は奇妙な目で見るものばかりだ。誰も助けようとはしない。
どのくらい進んだのだろうか。一度も止まらず進むと目の前に誰かが立っていた。気付いたAはやっと止まり、前を向く。
目の前に立っていたのは卯ノ花であった。まさか卯ノ花が来てくれるとは思っておらず、Aの顔は嬉々に染まった。
「卯ノ花隊長!隊長を・・・!隊長を助けてください!!」
しかし、卯ノ花の表情はいつもの優しい笑顔ではなく眉を下げ悲しげな顔でAを見ていた。
「・・・Aさん、鬼巌城隊長に何か言い残した事はありませんか」
「たくさんありますよ!わたしはこれからも隊長を支えるのだから!だから早く隊長の傷を・・・!!」
それでも動かない卯ノ花に痺れを切らし、詰め寄ろうとしたが鬼巌城の身体が横にズレて倒れ込んだ。
「隊長!!」
袖を破き、斬られた所に当てる。ボロボロと零れる涙は鬼巌城の顔を濡らす。
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yui - いいお話ですね!頑張ってください! (2019年11月28日 0時) (レス) id: a956401359 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水無月 | 作成日時:2018年11月4日 3時