第八夜 ページ11
見習いの来る期間だけ、皆が食事することが出来る
僕は、その期間だけ全員分の食事を作っていた
今まで一緒に食事を作っていた歌仙くんと堀川くんは折られ、それに反抗した和泉守くんは厚樫山に行ったきり帰ってこない
長船派の刀も…大体そんな感じだ
最後に残った僕は、貞ちゃんと鶴さんを見せしめのように目の前で折られ
加羅ちゃんを人質に取られ
…ごめんね
料理ができる刀が僕しか残らなかったばっかりに
・・・
今日は見習いがいるため、食事を全員分作らなければいけない
落ちていきそうな気持を必死につなぎとめて、重い体に鞭打って、
ふらふらとした足取りで
そこには先客がいたようで…
彼は
彼は……
あぁそうだ、さっき挨拶に来た見習いか
………お腹でも空いたのかな?
僕に気が付いたのか、こちらを向いた紅い瞳
何か言いたげなその瞳に、開きかけた口が閉じた
・
彼を見た途端、そろそろ昼餉の仕込みをする時間か、と思った
俺が普段仕込みをする時間はもうちょっと遅いが、
仕込みを始める時間は献立によるけどね
というか、何故口を閉じたのかがわからない
何か言いたかったんじゃないの!?
………あぁ、なるほど
彼___燭台切光忠は、”監視されてる”
そりゃそうだよね
”食事”は最も無防備な時間
斬るよりも……毒の方が警戒されないから
食事係の心を審神者に対する恐怖で染め上げ、なおかつ監視をすれば
しばらくは安全な食事が保証されるだろう
この本丸自体、所々に思考を鈍化させる香が焚いてある
土地神はわからないが、天津神レベルならともかく……
非常に腹立たしいが。
と、それはともかく
ぱっと見ではどうやって監視されてるのかがわからないからな…
今回はおとなしく引いておくのが賢明か
・
何か言いたげな瞳を向けておいて、何も言わずに去っていく見習いを目線で追いつつ、
毎日のように襲い掛かってくる後悔に涙を流す
……また、”助けて”って言えなかったな……
僕は”監視”されてるから、下手なことは言えない
僕を信じてくれている皆のためにも
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作者名:梅 | 作成日時:2020年7月5日 16時