1 ページ2
カーテン越しに暖かな光が差し込んでくる。香ばしいパンの香りと、窓辺から聞こえてくるココガラの鳴き声で目を覚ました。爽やかな旅立ちの朝だ。階段を下りて、キッチンへ向かう。色とりどりのサラダと、チーズの溶けたトースト。母のつくる朝食は、いつも手が込んでいて美味しかった。
「早く食べちゃいなさい。8時にホップくんが迎えに来るんでしょ。」
あ、そうだった。時間のことなどすっかり忘れていた。呑気にトーストをもそもそ頬張っている場合ではないのだ。壁に掛けられた時計に目をやると、時計の針はもう既に7時30分を指していた。時間が無い。如何せん私は昔から準備が遅くて、いつもホップくんのことを待たせてしまっていたのだ。今日こそは時間通りに……と思っていたけれど、今日も駄目みたいだ。だらしない性格は昔から変わらない。
早々に皿を片付け、2階へ戻りクローゼットを開ける。奥の方には、小さい頃着ていたセーターやらくたびれたズボンなんかが散乱していた。なんだか懐かしくて、ずっと捨てられずにいた物だ。思い出に溢れたこの服、そしてこの部屋とも暫くお別れなのだと思うと、寂しさで視界がぼやけそうになる。
「さて、どの服にしようか」
そう迷っているうちに玄関のチャイムが鳴った。7時55分、丁度約束の時間5分前。いつも彼はせっかちというかあわてんぼうというか、とにかく行動が速い。私にはない部分なので、内心それに憧れていたりする。とにかく、下着だけの無防備な姿を彼に晒すわけにはいかないので、そこら辺にあった動きやすそうな服を適当に着ることにした。まあ、悪くはない。急いでリビングへ向かって、母のお下がりの大きなカバンを背負った。
ラッキーアイテム
エール団の靴
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:伊詠 | 作成日時:2020年1月5日 18時