第93訓 あばよ ページ47
「Aもきたことだしちょっくら地球救いますか」
銀さんとそう言って駆け出した時はまだ良かった。
虚。相対するのは二度目だったけど、先に銀さんに合流した事を怒る総悟より、予定よりも早く病院を抜け出してきた事を怒る兄ちゃんよりよっぽど怖かった。
虚の存在を体の底で恐れているのがわかる。
怖くても斬りかかれるのは今まで培った体の反射だろう。
今は虚に斬りつけられた腹の傷が痛まない、周りの喧騒も聞こえてこない。アドレナリンのせいかおかげか体は軽かった。
近藤さんが斬られて頭のどこかがプツンと音を立てたところまでは覚えてる。
斬られて、立ち上がって、何度も斬りかかって。
周りは心配だったけど、何よりここで私が足を止めたら1人でもこの戦場から欠けてしまえば、大事な人たちを守れない。
アドレナリンが切れて傷が痛み出した時。
「A!!避けろ!!!」
虚は龍穴の中に消え、馬鹿でかい船がターミナルに突っ込んだ爆発音が私の無音だった世界を切り裂いた。
「いてててて」
「ったく、ぼけっとしてんじゃねェよ」
「総悟、ありがとう」
「どーいたしやして」
どうやら総悟が降ってきた瓦礫から庇ってくれたらしい。お互い笑っちゃうくらいボロボロで。
「やばい、マジで痛い」
今更傷口は燃えてるみたいだった。
「ダッセー、いてて」
人のことを笑った拍子に総悟も傷を痛めたらしい。
痛むくせに自分じゃなくて私の血を止血してる横顔にそっとキスをした。
「沖田くーん、俺の可愛い妹分に手出したってきいたんだけどぉ?」
「はぁ?てめぇの妹じゃねぇぞ万事屋ァ!」
同じ様にボロボロなくせに何故か元気な2人の兄貴が喧嘩してる。
「ねー、もしかして戦終わった?」
「終わっててくれって願ってらァ」
こうして、将軍を失ってからの真選組の長い戦いは終わった。
細かいことは漫画を読んでくれとか決して思ってない。思ってるわけがない。
ちなみに私が戻ってきたのは70巻くらいでこの話はそこから74巻の間だよというのは親切心で、忘れちゃった人はもう一回読んでとか思ってない。
とにかく、これで真選組の苦労も報われた。ということは私の苦労も報われたってことで。終わりは意外とあっけなく迎えるものだと思う。
銀魂本編さながら。
これで幕引き、めでたしめでたしってこと。
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しかし、そうは問屋が卸さなかった。
世界は厳しい。
銀さんは消え、神楽ちゃんも地球から姿を消した。
そして、真選組も…
私たちは己の手で切り拓いた新しい平安の世に必要とされていなかった。
さらば真選組
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作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21
作成日時:2021年8月27日 20時