第88訓 熱がある時は悪夢を見る ページ42
「はっ、はぁ。の、どかわい、た」
辺りは暗かった。総悟が隣で手を繋いだまま寝てるのが見える。
でもそれ以前に体がバラバラになりそうなほど痛くて自分がストーブにでもなって空気をあっためてる様な熱さを感じる。
総悟を起こしたくなかったけど、少し身じろぎをすると大きな目はパチリと空いた。
「どした?水?」
「う、ん」
「あー、熱上がってら。辛かったら起こせよ」
胸で息する私を見ながら総悟が心配そうに眉を下げてる。
心配させたくない、けど身体中がギシギシする不快感で目の端から水が伝った。
「体痛ェか?」
コクリと頷くと、うーんと唸りながらスマホで何やら調べてくれてるらしい。
「そうご」
「ん?」
スマホから視線を奪ってやった。
呼べばすぐに見てくれる。
そんな仕草一つが今は恋しい。熱があるからかな。
「ふふ」
ふにふにと私の頬を撫でる手も愛おしい。
「わぁったから、ちゃんと構ってやらァ。待っとけ」
そのままバタバタと何かを取りに行ってる間に私は限界を迎え眠ってしまった。
.
.
.
「んー、マシになった」
あれから途中で起きることなく朝を迎えた。
身体の血管が太いところに氷嚢が当てられてる。
どうやらこまめに取り替えてくれたらしいそれはまだ溶け始めてはない。
「あ、Aさんおはようございます。ご飯食べれますか?」
いいタイミングで障子があいて割烹着を着た灰元が顔を覗かせた。
「うん。今なら平気」
「隊長は会議中なので、遂に俺がお食事のお世話をする許可が出ました!」
「ん?良いことなの?なんか、お礼言いづら……」
「まぁまぁとにかく、今日のも自信作。梅粥です」
フーフーとさましてから、総悟同様「あーん」と言われておとなしく口を開ける。
さすが灰元絶妙な塩加減の優しい味が広がる。
「なんか、嬉しそうだね灰元」
「いやぁ、良く姉が熱出すもんでこうやって看病してあげてたなぁと思うと」
ここにもシスコンが……みんな揃いも揃って人が熱を出してるって言うのに嬉しそうで元気だったら確実に殴ってた。
「隊長明日も急ぎの会議らしいので、俺またAさんにご飯食べさせに来ますね!」
「ありがとう。なんかやっぱり嬉しそうでムカつくけど」
それにしても急ぎの会議とは何事だろうか。
第89訓 時満ちて→←第87訓 熱って測り始めると急に上がる
204人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21
作成日時:2021年8月27日 20時