第83訓 罪悪感とは ページ37
「っはぁ、っく」
「中々上出来だったけど、流石に負けたらこっちの部下達に面目立たないしね」
もはや立ち上がれなくなった男が床に膝をつく。
その床には血溜まりができる。
「終わったかィ」
「あー、今ちょうど」
粗方の捜索は終わったらしい。2階の隊士達も撤退が終わっている。
「冥、土の土産に……きかせろっ、なぜ、お前は弱者のっ味方を……する」
「守るよ、弱い者じゃなくても。
正しく生きようとしてる人の事を正しくない私だからこそ守る。それが、真選組で居るために必要で、近藤さんが私に求めているものだからね」
「はは、おま、えも真っ当な人間じゃな、いな」
「お互い様」
私が早く楽にしてやろうと、思ったその瞬間。血飛沫が飛んで、やったのは私じゃなかった。
「おら、ちんたら話してねェでけーるぞ」
刀から血を払い鞘に収める総悟の顔だけで何を考えてるかはわかった。
「文句は言わせねぇ、隊長様だからな」
「仕事しないくせに」
誰もが人を殺したくて殺してるんじゃないと言い聞かせている。
本当に悪いのは自分だと思いたくないから。
そう思わないときっと優しい心は砕けてしまうから。
それでいい。私がその心を守るから。
どうやら私の優しくない心は自意識の塊サボりの常習犯が守ってくれるらしい。
「すいません、Aさん自分が弱いばかりに」
何があったか察したのだろう高木は"言ったことと違う"なんて言わずに頭を下げた。
「いいんだよ悪いのは隊長さんだから。さ、帰ろうか」
.
.
「誰かが正しく生きる為に私達みたいな汚れ仕事をする人が必要ってすごい皮肉だよね」
血で汚れた手を繋いだ。多分ハンドルを握る右手も、繋いだ左手同様に冷え切ってるんだろう。
「あいつらは、こんな仕事してても真っ直ぐでいい奴らだけど」
「お前が過保護だからだろ」
「過保護にされてきたけど曲がった私はなんなの」
「お前は曲がっちゃいねぇよ」
車の揺れが心地よくていつもなら眠気が来るのに、今日は何故か眠れなかった。
「どーにもならねェ事もある。お前がいくら悪役になったって、正義のヒーローになりきったって。その足が間に合わない時にゃ仕方のねェ事でィ」
保護した子供の数は39名。
奉行所に連れて行けば取調べでまた拘束されるだろう。
それよりもいち早く帝の力で親御さんの元に返してもらう。
帰れなかった子は私が見つけた子以外にもきっと居る。
だからこの手を精一杯伸ばして、大事な人を守れる様に。私たちはそうやって強くなってしまったんだろう。
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作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21
作成日時:2021年8月27日 20時