真選組血風帳弍【沖田総悟】 (ページ30)

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第76訓サウナがあれば尚良しページ30

「ふぁー極楽」

湯船に入るために髪の毛を結んだAの頸にいくつも歯形が付いている。

それを隠すために稽古中は下ろしてたのか。

独占欲支配欲が満ち満ちて、そっと頸に口をつける。

「どうしたの不気味なくらい優しいんですけど」

「痛くされてェってことかィ」

「ご都合脳が」

ふわりと香るシャンプーの匂いを後ろから抱きしめていると不意にAが後ろを向いて唇に触れるだけのキスをした。

そのままふにゃりと笑ってみせたAはあの日の傷が薄れてきてることがわかる。

(今日はAのメンタルケア、今日はAのメンタルケア)

沸々と湧き上がる加虐心になんとか言い聞かせていると、Aがくるりと対面向きに体勢を変える。

「ねぇ、泣いてたよこの間」

「まーたそれかィ」

「本当に！だから、その、シてる時には言ったかもしれないけど、ごめんね勝手に居なくなって」

「お前は、どーせまたやる。次同じ状況になろうもんなら真っ先に自分を切り捨てちまう」

「う」

あの夜は何度も何度も体を暴きながら誓わせた。
"もうどこにも行かない""隠し事をしない""1人で片をつけようとしない"

あれほど約束させても、どれだけ言い聞かせようと、たとえ本当に足の腱を切って閉じ込めてしまっても、選択を迫られれば同じ手段を選ぶのが俺にはわかる。

「頼むから、何が本当に"俺のため"か考えてくれ」

こんなふうに誰かに縋り付いている自分を知りたくなかった。
それでも懇願してしまう、どうか消えてくれるな。

「うんって言っても信じてもらえないと思うけど、離れたくない」

いつのまにか、気を使われてるのは俺の方だ。

Aは拾えるものは全て拾ってきた。だからいつも唯一捨てられる自分を捨てて他の全てを掬い上げる事を選ぶ。

思い返せば昔からそう

あの時だって兄貴の大事を選んで自分の気持ちを押し込めただろ？

「たまに思うんでィ。あの時土方さんと姉上のことを受け入れられない、俺と同じわがままなガキならお前は俺の手を取らなかったろーなってな」

「兄妹は結婚できないよ。それに私は総悟が好き。そこにタラレバなんて無いの」

憎たらしい。いつもは我儘なくせに、嫌なところで物分かりのいいコイツの性格が心底憎たらしい。
でも困ったことにそこが好きだ。

たまらなくAの全てが好きだ。

「自分を勘定に入れねェ、相談するって考えがねェ、全部欲しいと拾っていく癖に自ら手放す、そーゆーところが嫌いでィ」

「随分な言い方」

「そこも含めてAが好きだから嫌なんだよ」

「ふふ、私も好きだよ。大好き」