真選組血風帳弍【沖田総悟】 (ページ24)

今日:1 hit、昨日:12 hit、合計:25,873 hit

第70話お菓子をご飯の代わりにするのは子供の頃の憧れページ24

「はい、これバレンタインデー1日遅れちゃったけど」

Aによって10数人に手渡されたのは鞘につける下げ紐だった。剣士の必需品だ。

「Aさぁぁああん」「副隊長ぉおおおお」

みんながきったない泣き顔で紐を握りしめてるのはかなり面白い光景だ。

「使うの勿体無いくらいです」

「飾っておこうかな……」

「いや、使ってね？みんなお揃い」

どんな鞘にも喧嘩しない落ち着いた色味だが、普通の下げ紐よりも太く洒落た柄があしらわれてる。

各々が自分の鞘に手慣れた様子で紐をつけると。
うん、中々いい感じ。実はその色を選んだのには訳があるがそれはまだ内緒だ。

「灰元ー私伊勢うどん食べたーい」

「えーもうちょっと早く言ってくださいよ！捏ねないといけないんだから」

「だってお菓子食べたら急にお腹空いてきたんだもん」

「もーしょうがないなぁ。ちょっとうどん粉調達してくるんで。若瀬片付けたのむ」

「またおれか……」

バタバタと慌ただしく灰元が廊下を駆け抜けていくのとすれ違いに風呂上がりの総悟がきた。

「A、お前の兄貴呼んでるぜ」

「うわ」

「パーカーも似合うな」

「え、ありがとう」

いつになくストレートに褒められてタジタジだが、さらに追い討ちでおでこにちゅ、と音が立つ。

「あー、俺たちそろそろ……」

凄まじいスピードで隊士達が消えて行き、総悟が満足げな顔をしてる。なるほどそう言う魂胆か。

「独占欲つよ」

「散々好き好き言ってたやつにいわれたかねーよ」

「ぐ」

「"俺の"パーカーも似合ってるぜ」

「ぐぐ」

「まぁ、とりあえず行けよクソ兄貴の所俺も途中まで送ってやるから」

「優しいと優しいで怖い」

「あ？」

「イエ、アリガトウゴザイマス」

「腰、痛ぇだろ」

あーそれでか。さすが元凶が言うと説得力が違う。

「土方さんの部屋はここ。まぁ、せいぜい絞られてこい」

「はぁ、もうちょっと私の頑張りを褒めて欲しいくらい」

少し拗ねた顔をすると朝方まで握りしめていた手がぐしゃりと髪を乱す。

怒ってるから、怒ってたからお礼はないけど労わる気持ちが伝わってきた。

「事後の日の総悟ってさサド性質ゴムの中に出しちゃったの？ってくらい優しいよね」

「殴るぞ」

「あー、あとこれスマホな。あんまし時計ばっか見るんじゃねェぞ」

何で知ってるんだろう。
さっきまで探してたものが手に渡る。不思議と時間を確認したい焦りは落ち着いてた。

「うん。わかった」