真選組血風帳弍【沖田総悟】 (ページ17)

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第63訓死してなお人を繋ぐページ17

「ここでお待ちください」

「は、はぁ」

あの男の屋敷よりも数倍広い敷地に居心地の悪さを感じる。
使用人の数もかなり多い。

「そちが、真選組の土方Aじゃな」

「ま、まさか……！！！！
ご挨拶もせずにご無礼をっ、真選組一番隊副隊長土方Aです。
政府からは解任された身ですので、隊服ではない無礼をお許しください」

簾越しに見えた姿でその人の正体はすぐにわかった。

烏帽子を被る男は正に現天子つまり……

天皇で間違いない。

　

「そんなに畏まらなくても良い。今日は私用じゃ。妹を助けてくれたそうで、1ヶ月半も探し回らせたのじゃがようやっと見つかったのでな」

「なぜ、私だと」

あの女の子がまさか陛下の妹君というのも驚きだが、Aは確かに名乗らなかったはず。

「帰って来てからあやつが「うーんうーん」と唸っとるで、訳を聞いたら「そなたの顔がどこかで見たことがあるのだがどこで見たか思い出せない」と」

「妹君とは初めてお目にかかったはずですが」

「それがな、茂茂の奴が残していった"プリクラ"なるものが手元にあっての」

(……そうだ、将軍様が最後に頼られたのが天子様だ)

京都は将軍徳川茂茂が死に際に過ごした土地だった。

Aは荷物から桐箱を取り出し、許可を取って近くに寄る。

「あーそうじゃこれじゃ。顔は少々違うがそなたに間違いない。妹の話によれば茂茂から聞いた通りの人柄の様じゃな」

帝が合図をするとスルスルと簾が上がった。

普通なら誰にも開かれない禁断のベールの先には、どこかかの将軍とも通ずる穏やかそうな男が居る。

「少し、思い出話でもどうだ」

「是非お願い致します」

Aと帝は少しの間共通の友人の話に花を咲かせる。

帝はAのことを茂茂の彼女だと思い込んでいたそうで大きな広間に2人の笑い声が響いた。

「して、褒美は考えておいたのじゃが……」

帝の提案にAは間髪入れずに返事をし深々と頭を下げた。
心底嬉しそうな笑顔を見て帝は満足そうに笑う。

「なるほどな。茂茂が惚れた女か」

「滅相もございません。私には勿体なすぎるお方です」

「まぁよい。思い立ったが吉日じゃ」

「寛大な御心に感謝致します」

「やめよやめよ、妹の命の恩人に足りんくらいじゃ」