第50訓 冬に降るのは雪だけじゃない ページ2
「帰ったら覚えとけ」
ぐずぐずと泣いてはいるが寝ているらしい。
先ほどから返事はない。
山道に入ったあたりからいよいよキツくなってきたが流石に日頃鍛えてきたこともあり無事に別邸までたどり着いた。
「沖田隊長!おかえりなさい大丈夫ですか?」
屋台から出るときに先に連絡しておいた隊員が玄関で待っててくれた様だ。
「悪りィな若瀬、荷物たのまァ」
「了解です。どこにお持ちしますか?」
「Aの部屋に。お前らに土産らしいぜ」
「マジですかさすが副隊長」
大量の紙袋を預けて仕舞えば大分手が楽になった。Aは思ったより軽かったらしい。
「Aーへやついたぜィ」
とりあえず自室に寝かせる。
ふぅと息を1つ。
どんな夢を見てるのか、いまだ目からは涙が落ちている。
「ったく泣くんじゃねぇよ」
沖田は羽織を脱ぐと隣に横たわり、ゆっくりとAの頭を撫でる。
それでもえぐえぐとなき続けるAをどのくらい見つめていただろうか。
「そうご……」
「お目覚めかィ泣き虫」
「わたし…っうう、そうごに」
「わかったから。やっぱり隠し事してやがったな」
酔っ払うと泣くタイプだったか?と苦笑しながら沖田はAを抱きしめ子供にするように背中をさする。
「きかないの……?」
「いえんのかィ」
ふるふると首を横に振るとまた泣き出すものだから沖田もそれ以上聞けなくなってしまった。
「わかったから。もう聞かねェから泣きやめ」
「んぅ」
まだ謝ってる口に1つキスをすると少し酒臭い。しかし柔らかいそれを啄むようにちゅ、ちゅと音を立てて2度3度口が合わさる。
少しずつ泣きっ面がキスを追いかける顔に変わる様を見て沖田は胸を撫で下ろす。
誰かを泣き止ませたいと思うのは2度目だ。
黒蝕は何年経っても衰えずに沖田の中を染めていく。
変わったのは沖田は泣き止ませる術を身につけたことくらい。
「ん、ぅ……はぁ、んっ…んぅ」
次第に沖田の舌はAの歯列をなぞったり舌先を突いたり、未だにAは着いていくのに必死だった。
「ぅ、っんうう……ぁ、んっん」
(あー可愛い。たまらねぇやめらんなくなりそうでィ)
誰も知らないこの無防備な顔を、自分が泣き止ませたこの顔をまた泣かせたいと思う。
今度は自分の手でぐちょぐちょに歪ませたい。
沖田の仄暗い感情は深いキスに必死になってるAにはバレない。
「蕩けた顔しやがって、ごめんなさいタイムは気が済んだかィ」
「うん」
「んじゃもう一回泣かせっから覚悟しろ」
第51訓 後悔は先に立たないからこそ後悔→←第49訓 後ろめたし冬の夜は
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作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21
作成日時:2021年8月27日 20時