真選組血風帳弍【沖田総悟】 (ページ39)

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第85訓人生はキャラブレの連続。人間皆多重人格ページ39

「ちっ、ブラコン臭ェ」

「うるさい、シスコン」

総悟の手は冷たい。そして、石鹸の香り。
祈る様に私の手を重ねて、あったかくなれ、あったかくなれと包んでも全然変わってくれない。

「A、冷たい手で冷たい手握りしめても熱くならねェよ」

「お風呂入ったのになぁ」

「んなに外に居たら冷えんだろ馬鹿か」

総悟は私の後ろに回ると着ていた羽織の中に入れてくれた。肩に乗せられた顎が少し重い。

「ねぇ、大事な人の為なら人を斬れる私って変なのかな」

「変じゃねェだろ。別に」

「斬ったことに罪悪感ある？」

「さーな。馬鹿だからどれが罪悪感か忘れた」

手は冷たかったけど、羽織の中はすっごくあったかくてホッとする。

「なぁ、何が嫌なのか、そもそも本当に嫌なのかわからねぇんだろ」

「……うん」

この罪悪感は、いやこれが罪悪感かすらも定かではないけど。
子供を助けられなかった事か、人を殺めた事か、それとも人を殺める事に慣れてしまった事なのか、何も感じない自分が怖くて感じるふりをしてるのか

ぽつりぽつり取り止めもなく話し終えると、自分の肩口からため息。

「疲れてんのに気づいてねーのが1番問題でィ」

「疲れてないよ？」

「俺の前では、副隊長じゃなくていい、みんなの頼れるAさんじゃなくて、聖母マリアでも、閻魔大王でも、スーパーヒーローでも、最恐のヴィランでもなくて、ただ土方Aでいろよ」

ぐるぐる取り繕って言葉にしていた考えがバラバラの棚にしまわれていく。

どれもこれもが私の本当に感じた気持ちで、私の歪んだ思想で、棚一つずつにただ「土方A」というラベルが貼られるだけ。

「もし、罪悪感を持たなかったからってお前のことを気持ち悪ィとも思わねェ。持ってたなら持ってたであくまで人間だなと思うだけ」

わかったか？と問いかける声はすごく優しくて、その顔が見られなかったことが少し残念。

「初めて人を斬った時のこと覚えてる？」

「忘れた」

総悟らしい嘘だと思った。それでも私は少し気が楽になってそのまま総悟に背中を預けて眠りに落ちた。