第79訓 バラガキの道も一歩から ページ33
「深尾……タバコ吸う様になったの」
「はい、ゲホッ、カハッ」
喫煙所の外からAが咽せている深尾に冷たい目線を送る。
「あのゴミ兄貴、うちの可愛い隊士に何つーことを。ボコボコにしてくる」
最近は土方にも稽古を付けてもらってる事は周知の事実で、タバコの発生源は明らかだ。
「やめてください。これは俺が勝手に真似てるだけなんで。形から入ろうかなって」
「あんたってさ、真面目なのにたまにすっごい馬鹿だよね」
相変わらず吸っては咽せている深尾に、まぁいいやと話題を切り替えて1束の書類を渡す。
「2番隊に負傷者が出て少し休ませることになったから、次の出張は私達が異国に行く。後でその書類の読み合わせと隊内会議やるから3時に集合で」
「了解です」
臭い臭いと足速に喫煙所を離れるAの後方からまだ咳き込む声が聞こえた。
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「というわけで、3月26日に大阪から出発するのでまだ1ヶ月くらいあるけど各々準備しておいてね」
広い会議室に1番隊だけ集まってAが話を進める。
横で沖田は興味なさそうに寝転がっているがもはや誰も突っ込む者はいなかった。
「んで、その前になんだけどあの方から御使い入ってるので来週の水曜日久々に討ち入り」
帝の妹を攫おうとしていたあの男達の詳細を山崎が特定してきた。
皇室も大々的にその事実を奉行所に話せないため、真選組で内々に処分する事となった。
Aが淡々と詳細報告を読み上げる。
「……で最終的には大元をテキトーな罪つけて奉行所に引き渡す。まぁ、でっち上げなくても他にも人攫いやってる集団だから証拠とる感じで。もしくは斬ってもいいらしい」
危険分子の排除。それが最優先。
山崎によれば人身売買を生業とする大きな組織で元よりゴミの様な連中だから、とAは続ける。
「一番隊だけで行くんですか?」
「組織自体はデカイけど本拠地の京都にめちゃくちゃ人がいるわけじゃないらしいので、まぁ私達だけで大丈夫って言う判断かな。他の奴らも出払ってるし」
先週に比べて御所に居る隊の数もさらに減っていて、局長の近藤も異国の権力者に会いに行っている。
準備の方は着々と進んでいた。
「ま、そんな感じで討ち入りの準備も各自しっかり。はい、会議終わり!お茶のも」
真面目な雰囲気も書類と一緒にパパッと片付け、秋山がお茶を淹れに行く。
灰元もそれについてお茶請けの準備に向かう。
いつもならここで明るくはしゃぐ高木がやけに静かだった。
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作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21
作成日時:2021年8月27日 20時