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虹村視点

貴「…よし、終わり。あら、食べて良いわよ?」

虹「じゃあ…その、いただきます……」

貴「どうぞ。ちゃんと挨拶を言えて偉いわね」

虹「……お邪魔しますもこんにちはも言ってねぇし偉くなんか…」

貴「緊急事態では仕方ないわ。それに十分偉いわよ。親御さんもしっかりしてるのね、きっと」


…褒められた

ちょっと嬉しかった、なんてな


虹「…なあ、このクッキーってアンタが作ったのか?」

貴「そうよ」

虹「その…すっげー美味い」

貴「まあ、嬉しい!褒められるのなんて何年振りかしら!でもね、お菓子って作るときに甘い匂いがするじゃない?」

虹「ん、まあ」

貴「花なんかの匂いと混ざるらしくって、通りがかった人でたまに噎せる人がいるのよ」

虹「………すごい甘そうだな、匂い」

貴「私は嫌いじゃないけれどね」


ふふ、と微笑むこの人はどうにも俺の目を惹きつけて離さない

甘いクッキーと麦茶が美味くて、この空間も心地よかった

最近は喧嘩ばっかりだったしな


貴「あ、私ばっかり話しちゃってごめんなさいね。人とこうして話すのは久しぶりだから、つい」

虹「あー、いや。アンタの話、聞いてるの楽しいし」

貴「貴方は本当に嬉しいことを言ってくれるわね。でも虹村くんの事、知りたいわ」

虹「俺のことなんて別に…」

貴「知りたいの。部活って入ってるのかしら」

虹「……まあ、一応バスケ部」

貴「バスケ?すごいわね、私は絶対に出来ないわ」

虹「あんまり出てねぇ」

貴「どうして?楽しくないの?」

虹「………いや、何となくサボってる。外歩いてると喧嘩とか吹っかけられるし、喧嘩した後に部活したくねぇし」

貴「喧嘩?…ああ、だからたまにケガしてるのね」

虹「…うん」

貴「喧嘩をするならちゃんと勝たないとダメよ」

虹「………アンタってそういうこと言うんだ」

貴「え?」

虹「喧嘩なんて絶対ダメ、って言われると思ってた」

貴「ああ…ふふ、そうね、ダメよね。でも仕方ない時ってあるじゃない。どうせやるなら勝たないと余計な感情を背負うことになるもの」

虹「……実は元ヤンとかなの?」

貴「違うわよ?でもね、弟がやんちゃでよく他の子と喧嘩していたから」

虹「…弟いんのか」

貴「ええ、腹違いのね」

虹「あー…悪い」

貴「別に良いのよ、隠すことでもない…のかしらね。まあ良いわ」

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作者名:碧夜叉 | 作成日時:2018年12月13日 6時

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