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虹村視点
虹「…Aさんって糖尿病とかになりそう」
貴「絶対にないとは言い切れないわね」
虹「むしろ危ないだろ」
貴「確かに」
虹「………何で食えなくなったんだよ」
貴「さあ…ストレスかしら」
虹「…やっぱり?」
貴「でも何も口にできないよりはマシよ。それに甘い物は美味しいから」
虹「いや、まあ…そうだけどさ」
貴「そのうち何かの病気になるとは思うけど、どうしようもないのよね」
虹「…普通の飯が食えればな……」
貴「それが一番だけど、仕方ないの」
虹「病院行った?」
貴「一応…行ったけれど、分からずじまいだったわ。ストレスからくる一種の摂食障害じゃないかと言われたけど」
虹「ふーん…そっか」
貴「本当は違うのかもしれないけど、もう良いのよ。私はきっと近いうちに死ぬもの」
虹「………病気、悪化したのか?」
貴「あ…いいえ、そういうわけじゃなくて。身体も弱くて父親がアレでまともに食事ができないから…30歳まで生きられたらいい方じゃない?」
虹「…30歳……」
その時俺は20歳か
………葬式なんて出たくねぇよ
虹「…ダメ。Aさんはもっと生きねぇと」
貴「……そう?私が死んだって喜ぶ人の方が多いわ」
虹「俺は悲しい」
貴「…………ありがとう、修造くん」
虹「それに灰崎だってきっと悲しむぜ。俺は20歳でAさんの葬式に出るなんて嫌だからな」
貴「あらまあ、お葬式に出てくれるの?それだけで嬉しいわ」
虹「そ、それじゃダメだって言ってるだろ!」
貴「ふふ、優しい良い子ね。私、貴方のそんなところが本当に好きなの」
微笑みながら平然と言うAさんに、俺の顔は簡単に赤くなる
………無自覚だからタチが悪い
好きな人にこんな事を言われたら、ついつい本気にしてしまう
いや、Aさんの本心なんだろうけど、こっちが期待するって話
貴「修造くん?」
虹「あ…なに?」
貴「どうかした?ボーッとしてたけど」
虹「ああ、いや…別に…。つーかAさん、花に水やらなくて良いのか?」
貴「あ、私ったら忘れていたわ。教えてくれてありがとう」
虹「……うん。なんか手伝う?」
貴「本当?じゃあここから半分の花に水をあげてくれる?」
虹「分かった」
Aさんにジョウロを借りて、ベランダの半分の花に水をやる
Aさんとこうやって物事を共有出来るのが嬉しかった
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作者名:碧夜叉 | 作成日時:2018年12月13日 6時