32 ページ32
貴「でもあの人が死んで6年経つのね。早いわ」
虹「……付き合ったの、その人で最後なんだろ？心残りとかねぇの？」
貴「ないわよ。いつまでも想っていたって亡くなってたら帰ってこないしね」
虹「…ふうん」
あー、俺ってバカだよなぁ
こんな話を聞いたのに未練がないって知ると少し嬉しいだなんて
単純だし、わりと最低だと思う
貴「あ、ごめんね。こんな話を聞かせてしまって」
虹「あー、いや、別に。Aさんの話、聞くの好きだし」
貴「…嬉しいことを言ってくれるわね」
虹「だって、俺はAさんの過去なんて知らないし…それを聞くのって楽しいから」
貴「私の過去なんて知って楽しいの？」
虹「うん」
貴「変わってるわね」
虹「そうか？」
Aさんのことなら何でも知りたいとか思うけどな
だって俺より10歳上だし、当然そこには俺の知らない過去があるわけだ
どうやって生きてきたのか、とか、知りたい
虹「Aさんは部活とかに入ってたのか？」
貴「部活？いいえ、入っていなかったわ」
虹「何で？」
貴「身体が弱いから運動部は無理だし、文化部は色々面倒そうだったから…」
虹「じゃあさ、今になって入ってみたい部活とかある？」
貴「………バスケ部かしらね。マネージャーをしたいわ」
虹「バスケ部？」
貴「ええ。修造くんがいる帝光のバスケ部に入りたいの」
虹「な、何でまた…」
貴「修造くんがバスケをしている姿を見てみたいから」
虹「………そ、そっか」
急にこういう事を言い出すからこの人は怖いんだよな
無意識なんだろうけど、正直ガラにもなく胸がきゅんきゅんする…とか言いたくなるレベルで
………Aさんとどっかに行ってみてぇな
デート、じゃ、ねぇけど
虹「Aさんは高校卒業してずっとここにいんの？」
貴「ええ、そうよ」
虹「外に出た？」
貴「…………本当に体調が悪くて治らなかった時に行った病院くらいかしら」
虹「それだけ？最近は？」
貴「全然出てないわね」
虹「外…出たい？」
貴「………まあ…そうね。でもきっと出られないし、出ても分からなくて迷ってしまうわ」
虹「俺が…連れていってやろうか？」
貴「そ、れは……すごく魅力的だけれど…」
虹「…ダメ？」
貴「ダメではないわ。でも私は今ケガをしているし、それに勝手に出たのを知られると…」
虹「あー…そっか」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：碧夜叉 | 作成日時：2018年12月13日 6時
