85_蓮矢ゆうき【世界を嫌いになりたい】 ページ42
零さんが皆を集めて提示した策に、ボクは心底驚いた。
(ここから抜け出す……!?)
正直、出来ないと思った。いや、システムがどうとか監視がどうとか、そういう話じゃない。
「ここを出ちゃうの……?」
思わずそう呟くと、皆が、特に零さんと進道さんが驚いたようにこっちを見た。
「あ……い、いや……」
「そもそもさ、これは各部屋に伝えて周れば面倒臭い事しなくて良かったんじゃない?」
もしかして助け舟なのかも、オズさんがボクの方を気にせずにそう言った。
「あ……確かに」
「いや、それも何か面倒臭かった」
「……大胆な事を言い出したと思ったら、なんや、いつも通りやなぁ」
零さんを見て呆れたように呟く七夜さん。彼も、ここから脱出するのに賛成なのだろうか。
(そんな事ってあるの……?)
七夜さんは内通者ではないのだろうか。でも彼は今まで、はっきりとした否定をしていないのだ。
疑いたくはないけれど、てっきり七夜さんは本当に内通者とばかり思っていた。
(いや、うぅん……やっぱり本当に内通者なのかな……?)
だとしたら、とボクは考え続ける。これ以上考えたら戻れなくなると分かっていながら、嫌な方へ嫌な方へと思考が吸い寄せられていく。
(他にも内通者さんは居るはずだよね?その人達に密告されたらどうするの?今までは何事も無かったけど、もしボク達がここから出ようとしてるってバレたら……)
ここにいる子供達の人数は多い(ゴミなんて表現をボクは使いたくない)。全員を監視しようと思ったら、一人や二人じゃ足りない。
最少でも三人……もしかしたら四人もいるかもしれないのに。
(その目を全員がくぐり抜けるのは、どう考えたって無理だ。七夜さん以外に目安もつかないし……)
進道さん辺りは、怪しい人が分かっているのかもしれないけれど、問題はそこじゃない。
内通者を見つけない方が皆の為になるのに、ここから脱出するとなると嫌でも内通者を見つけないといけなくなるんじゃ……。
「ゆうき君?」
零さんがボクの顔を覗き込んでいる。気づけば、話し合いは終わって、皆が各々の部屋に戻り始めていた。
「さっき、何かちょっと言いかけてたよね?反対意見なら全然聞くけど」
「あ、いや、い、良いんだ!大丈夫だから!気にしないで……あはは……」
零さんは「そー?」といぶかしげな顔をしつつも廊下に出て行った。
「……心配させたくない……」
それに、どちらの意見が正しいかなんて、まだ今は分からないから。
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ニャ助(プロフ) - 更新しました。こんなに短くてすみません(><) (2020年5月4日 11時) (レス) id: 636a33148d (このIDを非表示/違反報告)
ニャ助(プロフ) - お久しぶりです!最近更新出来ずすみません…!更新してきます! (2020年5月4日 10時) (レス) id: 636a33148d (このIDを非表示/違反報告)
(=゚ω゚=)にゃあ - 更新しました。 (2020年3月23日 15時) (レス) id: 91777e8ddd (このIDを非表示/違反報告)
(=゚ω゚=)にゃあ - 更新します。 (2020年3月23日 14時) (レス) id: 91777e8ddd (このIDを非表示/違反報告)
春雨(プロフ) - 更新しました!オズはまだ行く先決まってないので、使って話を進めてもらって構いません! (2020年3月21日 23時) (レス) id: 55d503be78 (このIDを非表示/違反報告)
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