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53_傘村折心【世界で救われたい】 ページ6

*
「それから…オズ、降りるから」
「…何が?」

零くんは首を傾げて問うた。それを確認して、オズは続ける。

「七夜くんの記憶の改ざんに…そこまで意味は無いんじゃないかって思ったんだよ。
何かされた訳じゃないし。内通者自体の事だって、分かんないのに考えてたってきりがない」

ぐるぐるぐるぐる、答えも分からない問を脳内で繰り広げていたって、仕方ないんだから。

「――だから、もうやめようと思った…いや、既にやめたんだ。色々とね」

オズが喋り終わっても、零くんは暫く黙っていた。

やがて口を開いたかと思えば、「そっか」とだけ呟く。

「ごめんね。それでその…ほら。例の睡眠薬、返すからさ」

そう言って零くんの手に持たせてから、オズは部屋を出た。

零くんには、ちょっと申し訳なかったかな…

暫くぼうっと歩いていると、背後から「オズくん」と声がした。

オズの事を「くん」付けで呼ぶ人なんて、彼しかいない。それが分かってるから、オズも名前を呼び返しながら振り返った。

「エルイくん」

そう言えば、今出会うまで、見かけなかった気がするんだけど…ああいや、昼食の時にはいたっけ。でも、普通に彼が行動している所は見かけていないので、大方部屋に居たんだろう。

オズが思考している内に、エルイくんはオズの方へ歩いてきていた。

「んー…」

そして、オズの目の前で立ち止まり、此方をまじまじと見つめてから笑顔を浮かべた。

「やっぱりオズくんは醜くていいね」
「うーん…第三者が聞いたら確実に誤解するだろうけど…ありがとう」

彼…エルイくんの言う『醜い』とは、『美しい』という意味合いで、褒めてるらしい。だからオズは素直に嬉しいんだけど…やっぱり、そうじゃない子もいるんだろうなぁ。

未だ小さく唸りながらオズを見つめるエルイくんを横目に、ふと、ゆうきくんの事を思い出す。

さっき変な別れ方しちゃったからなぁ。探しに行こうとしてたんだけど…彼のこの様子じゃ、何だか言いづらいや。いや、いつも通りだけどさ。

仕方なしに口を開こうとした時、オズより先にエルイくんが口を開いた。

「あ、そうだった。ボクはちょっとリビングの方に顔を出してこようとしてたんだ」
「リビング?そうなの」

エルイくんは「誰かと色々話したくて。内通者の件とか」と頷いた。

「もう少しオズくんを見ていても良いけど…また今度にしておくよ。じゃあね」

一方的に会話を断ち切って去っていく彼を見送ってから、オズも踵をかえした。

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ニャ助(プロフ) - 更新しました。こんなに短くてすみません(><) (2020年5月4日 11時) (レス) id: 636a33148d (このIDを非表示/違反報告)
ニャ助(プロフ) - お久しぶりです!最近更新出来ずすみません…!更新してきます! (2020年5月4日 10時) (レス) id: 636a33148d (このIDを非表示/違反報告)
(=゚ω゚=)にゃあ - 更新しました。 (2020年3月23日 15時) (レス) id: 91777e8ddd (このIDを非表示/違反報告)
(=゚ω゚=)にゃあ - 更新します。 (2020年3月23日 14時) (レス) id: 91777e8ddd (このIDを非表示/違反報告)
春雨(プロフ) - 更新しました!オズはまだ行く先決まってないので、使って話を進めてもらって構いません! (2020年3月21日 23時) (レス) id: 55d503be78 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:製作者一同 x他6人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年2月11日 22時

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