side I ページ43
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楽屋に戻ると大ちゃんと薮だけが残っており、他のメンバーは帰ったみたいだった。
『ただいま。』
「おかえり、まだ帰ってなかったんだな。」
「てか、伊野ちゃん大丈夫?顔色悪くない?」
『…うん、ちょっと体調悪いかも。早く帰ってゆっくり休むね。お疲れさま。』
精神的なものです、なんて言えるわけもなく俺は2人を適当にまき、カバンを持って足早に楽屋を出た。
本当は好きな人がいるのに山田には言わなかった。山田が俺に冷たかった原因。
きっと山田はどこまで俺を騙せばいいんだと怒っているのだ。
言えるわけないじゃん。
俺はお前が好きだから言えなかった、なんて。
そんなこと言ったら引かれるに決まってる。
一人になった瞬間、涙が勝手に流れた。
「伊野ちゃん、帰るの?」
『…知念』
知念は楽屋に戻る途中だったのだろう。先ほどお別れの挨拶をしたのにまた出会ってしまった。
「伊野ちゃん泣いてる…?」
『ごめん…自分が悪いくせに女々し過ぎるよな。』
自分がこんなに弱い人間だと誰にも知られたくなかった。
「僕が余計なこと言ったからだよね?ちょっと待ってて。」
知念はそう言って、走ってどこかへ言ってしまったと思ったらすぐにカバンを持って戻ってきた。
「お待たせ伊野ちゃん。行こう、涼介の家に。」
『えっ…イヤだ…』
「僕は2人に何があったのか分からない。だけどそのまま後悔するより言って後悔した方がいい。」
知念は俺の腕を思い切り引っ張られ、つられて足が前に出てしまう。
『これは俺だけの問題じゃない。メンバーにだって迷惑掛かる。』
「迷惑なんか掛からないよ。それに伊野ちゃんのせいじゃなくて涼介が悪いから気にしないで。」
『…?』
なんで山田が悪いんだ…?
知念に引っ張られ続け、俺は考える間も無く押されるようにタクシーに乗らされた。
「僕のマンション、涼介と同じなの知ってるでしょ。オートロックを無視して涼介の部屋の前まで連れてってあげる。」
『ちょっと待って、すっっげぇイヤなんですけど。』
「涼介に酷いこと言われたら、僕の家においで。一晩中愚痴に付き合ってあげるから。ね?」
なんで人を好きになるのはいつも苦しいことばかりなんだろうか。この歳になっても上手く恋の仕方が分からなくて、知念を巻き込んでしまった。
『…帰りたい。』
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ゆっけ(プロフ) - 雪さん» コメントありがとうございます。拙い作品ばかりの中、全作品読んでいただきありがとうございました。次回作も読んでいただけるよう頑張ります!ありがとうございました。 (2018年11月26日 20時) (レス) id: 6c38319326 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - ゆっけさん、完結おめでとうございます。とても大好きな作品でした。全作品とても大好きです。またやまいのに出会えることを心から楽しみにしています。 (2018年11月24日 21時) (レス) id: 15bd49f13c (このIDを非表示/違反報告)
ゆっけ(プロフ) - けーとさん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけたようで本当に嬉しい限りです。次回もけーとさんに楽しんでいただけるか分かりませんが、またお会いする機会がございましたらよろしくお願いします。 (2017年11月19日 23時) (レス) id: bdab3378d2 (このIDを非表示/違反報告)
けーと(プロフ) - 完結おめでとうございます!いっつも楽しみに読ませていただいてました!!ものすごくどきどき、ハラハラしました!また、他の作品でも期待してます! (2017年11月19日 17時) (レス) id: 2633a3dd45 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっけ(プロフ) - 翠さん» コメントありがとうございます!本作品を楽しんでいただけて嬉しい限りです。拙い文章ですがやまいのの今後を楽しみにしていただければ幸いです。私も翠さんの作品更新を楽しみに待ってます。 (2017年10月30日 21時) (レス) id: bdab3378d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆっけ | 作成日時:2017年8月11日 0時