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NOside

「向こうもまた集めたもんですね」

屋上の低い柵の内側に身を伏せ、手塚は呆れた口調で呟いた。

該当施設以外に交戦範囲を拡大してはならないという規定のため、図書隊は常に最も高い位置を自動的に確保できる。
即ち該当施設の屋上だ。

地上を見下ろすと、資料館を隙間なく取り囲むように良化特務機関の部隊が展開されている。
投入人員は周辺地区で交通規制措置などに従事している後方支援までを合わせると二百名にも上るだろう。
良化特務機関の一支部全投入にも近い規模の動員である。
そのためか図書基地のほうはノーマークらしい。
攻略しやすいほうに全戦力を振ったようだ。

関東図書隊で迎え撃ったことのある検閲は最大でも双方五、六十名の規模で、今回の規模の検閲は隊として初の経験だ。
目に付く車輌も通常の検閲で使われているバンではなく野戦用のようなトラックで、持ち込んだ装備もさぞや質量ともに充実しているに違いない。

もっとも、それはこちらも同じだ。
資料館の敷地が広大であることを考慮しても、市街地で可能な最大規模の激突になる。

「人員的には互角だな」

手塚に答えたのは手塚と同じく狙撃手として配置されている別班の進藤、図書特殊部隊随一の狙撃の名人である。
図書特殊部隊創設時からのベテランだ。

「できるだけ殺すなよ。死人が出ると戦闘が激化する」

「向こうはそんな配慮をしてくれるんでしょうか」

「配慮はしないだろうが、一応お互い弱装弾の規定があるからな。それに奴らの出方は考えんでいい。高さのアドバンテージに任せて死人を出して、敵がキレたらそれを受け止めるのは下の味方だ。俺達が覚えとかなきゃならないことはそれだけだ」

長年狙撃手を務めていないと気づかない側面である。

「こっちをキレさせるリスクは奴らが心配すればいいし、その場合は俺たちもアドバンテージをフルに使うだけだ」

それが分かっていれば向こうも無茶はするまいよ、と進藤。

検閲抗争において、狙撃手の存在はむしろ戦況の抑止力である。
そしてその抑止力は屋上に五名が配置されていた。
基本的には地上の各班の要請に従って援護射撃に徹することになる。

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設定タグ:図書館戦争 , 小牧幹久 , 小説沿い   
作品ジャンル:恋愛
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オムライス(プロフ) - 田中圭くんにハマって一気に読みました!続き楽しみにしてます! (2020年9月26日 8時) (レス) id: 3df1040212 (このIDを非表示/違反報告)
ハリネズミブー - 楽しく拝見させて頂いています!大変かとは思いますが、続きを期待しています!応援しています! (2020年6月4日 4時) (レス) id: b581b337c6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きぃ太 | 作成日時:2019年9月22日 9時

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