溺 続き ページ19
「何してんの。」
横からひょこっと顔を出すと少し気怠げにこちらを見る彼と目が合う。
「別に。」
ちらっと私一目見ると再び夜空に視線を映す彼。
ベランダの柵にだらっと掛けられた左手と、頬杖を付いている右手。それだけで絵になる。とか思ってしまう私はもう末期なのだろう。時折、左手の人差し指と中指で挟んでいるソレを吸う仕草は更に大人っぽさを際立たせている。
はぁ、私が場違いであるように思えてきてしまう。
じーっと見つめていると、少し笑われる。
「見せもんじゃないんだけど。」
ふーっと吐き出して白い煙を立たせると、くるっとこちらを振り向き箱を差し出してくる。
「いる?」
「ん、買おうかな。」
だってこれ買ったらお揃いじゃん、なんて。
本当に僅かな時間でも、私にとっては大切な思い出になるから。すると、
「はい。」
と、煙草一本だけ手渡される。
これじゃ吸えないじゃん。
ガサゴソとズボンのポケットを漁る彼の方を見ながら、ソレを咥える。
「ん。」
彼の肩を掴んでぐいっと引き、こちらを向かせる。
伝わるだろうか?
すると彼は妖しい笑みを浮かべて煙草を咥え、ぐっと煙草を押し付けてくる。
後頭部を掴まれ、逃げられなくなった時、じゅ、という音と共に火がつく。
パッと目を開けて火を確認するとゆっくりと手を離され、彼は距離をとった。
「ついた?」
ニヤッと笑いこちらを見てくる彼。
自分から仕掛けたはずの私の頬は少し赤いだろう。
そんなこともきっとどうだっていいんだろうな、君は。
「ん……」
少しだけ声を出して返事をする。
すると再び夜空に視線を戻した彼。
それに倣って同じように空を眺める。
どうせ都合の良い女なんだろう。
互いに恋愛感情はない。そんな関係。
それで良いから、と願ったのは自分なのに。 どうしてこんなに苦しいの? だからさ、
「ねね、」
_____
続きます。すみません。
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作者名:ゆう | 作成日時:2023年11月16日 17時