第35話 乱心と秘密 ページ37
「シオン。さっきの声聞こえた?」
「いいえ? どうしたんですか?」
「いや、こっちの話だ。聞こえないならいい。おやすみなさい」
「おやすみなさい。A」
自室で試しにエクストラスキルの『
「若様になんと破廉恥な事を…!」
襖を背にして膝を抱え、そこに顔を
寝かしつけるためとは言え、若様の胸に触れてしまった。穴があったら入りたい。もういっその事、誰かあたしを生き埋めにしてくれ。
だが、気を緩めるとついつい本音が出る。
「…あー…。胸筋が素晴らしかった。いや。腕の筋肉もだけど、浴衣と筋肉とか最高だな。この組み合わせを考えた輩は、即刻あたしの前に出て来い!」
半ば怒り気味に
あたしって、こんな性格だったっけ?
…ああ、そうだ。今まで溜めこんでいた感情を吐き出しているだけ。だから、大丈夫。
自分の行動を正当化した途端、口が滑る。
「普段見えない鎖骨が見えるだけで、あんなに色気が
防音ゆえ、ご近所迷惑にならない。それどころか、下の階にいる男性陣にも聞こえない。身の丈を思う存分、ぶつけ放題だ。防音結界様。否。エクストラスキル様、ありがたや。
「おい。何をやっている?」
「っ!?」
突然、自室の押し入れから、ソウエイの声と共に本人が現れたものだから、心臓が口から飛び出るかと思った。
「なぜ、兄貴がここに?」
「シオンからの思念伝達を受けた。『隣にいるAの部屋から、全く生活音が聞こえてこない。だから、調べに来てくれ』と」
「…へぇ。そうなんだ」
彼の報告を聞き、翌朝の稽古で打倒シオンを胸に掲げた。
「黙って入って来た事は謝る。いくら従妹とはいえ、一人の女性だからな」
「大丈夫だよ。気にしてない」
部屋の中央に、折り畳み式の小さな
「それで、兄貴はいつから押し入れに?」
「『胸筋が素晴らしかった』からだ。誰にも言わないから安心しろ」
「……」
くつくつと喉を鳴らして兄は笑うが、あたしは羞恥心で顔を紅くし、しばらく言葉を失っていた。
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竜胆(プロフ) - 200回の投票を頂き、ありがとうございます。 (2023年3月8日 19時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - お気に入りに入れて下さる方が、再び400人に到達! ありがとうございます。更新できるように頑張ります。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 瑠亜@影月さん» 瑠亜@影月さん、コメントと応援ありがとうございます。心変わりしてしまうほどとは(笑)もう話が一杯になったので、ただいま続編に向けて考案中です。更新できるよう頑張ります! (2019年5月13日 1時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠亜@影月 - 私はソウエイが推しキャラだったんですが、若様に心変わりしてしまいそうです(笑)これも竜胆さんの文才の力ですね!これからも更新頑張ってください! (2019年5月12日 21時) (レス) id: 9b9cc1c6b7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 紫癸さん» 紫癸さん、コメントと応援ありがとうございます。お褒めの言葉も重ねて感謝します。ただいまコミック版最新話の展開を待機している状態なので、もうしばらくお待ち下さい。必ず更新します。 (2019年4月11日 22時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竜胆 | 作成日時:2018年12月1日 1時