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陌貳 ページ9

森の梢の方から霧が徐々に降りて来る。


春先にも関わらず、吐く息は白い。いつの間にか緑が僅かに認められるだけで、樹木は淡い影となっていた。


懐かしい気配がする。


やがて見えてきたのは、他を圧するが如き聳える、注連縄(しめなわ)が掛けられた巨大な岩。その中心には、大きな亀裂が走っている。


「水は岩をも穿つ、か。」


次の瞬間、霧を裂いて刀が振り下ろされた。


反射的にその場から飛び退く。油断していた訳ではない。ただ、まさか出会い頭に攻撃されるとは思ってもいなかった。


刀を振り下ろした男はゆっくりと立ち上がる。傷の装飾が入った狐の面が、静かに此方を見据えていた。


次の瞬間大きく踏み込んで、少年は迫ってきた。言葉を交わすつもりはないらしい。つまり、


___剣術(これ)で語れということか。


上等だ、見せてやろうじゃないか。私が成長した姿を。


全集中・水の呼吸 壱ノ型 水面斬り


全集中・暉の呼吸 天菩比ノ舞


「はい、そこまで!!」


その瞬間、間に少女が割り込んで止めざるを得なくなった。急停止して、刀を下ろす。緊張が一気に解け 小さく息を吐いて、彼女の元に歩み寄った。


「久し振りだね、真菰ちゃん。」


「もう、二人共何でいきなり戦い始めるの? しかもちゃっかりAちゃんは木刀を持ってきてるし。」


「どうせ錆兎と戦う(こうなる)だろうと思っていたからね。錆兎も久し振り。何時も通りで安心したよ。」


「あぁ、本気で手合わせ出来るのはお前しかいないからな。」


「ふふっ、錆兎はね、ずっとAちゃんが来てくれるの楽しみにしてたんだよ。Aちゃんが山に入った時からずっとそわそわしていたの。」


「ま、真菰! それは言わない約束だったろ!!」


珍しく顔を真っ赤にしてあたふたする錆兎は可愛らしい。錆兎に強制的に口を押さえられもごもごしながらも、真菰は楽しそうな笑みを浮かべていた。


「えぇ、私も二人に会えるの楽しみにしていたよ。そういえば東京に発って以来だね。たくさん話したい事があるんだ。」


「「お話聞きたーい!!」」


背後から聞こえた声に振り返ると、霧の奥から狐の面を付けた多くの子供達が傍に駆け寄ってくる。


「皆にお土産も買ってきているんだ。一緒に食べながらお話しようか。」


東京で買った洋菓子の詰まった袋を掲げれば、歓声が上がる。


皆で輪になり、話に夢中になる内に夜は更けていった。

陌參→←陌壹



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酸漿(プロフ) - きなこ餅さん» 有り難う御座います。これから続編を書いていくので、そちらの方も是非お楽しみください。 (2019年10月20日 21時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ餅 - たくさん伏線がはられていて、読む度にドキドキします! これからも更新頑張って下さい! (2019年10月19日 21時) (レス) id: 3d1d19266b (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 神桜佳音さん» 嬉しいコメントありがとうございます(^-^)励みになります。これからもどうか宜しくお願いします。 (2019年10月13日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
神桜佳音(プロフ) - ようやく納得しました…!話が深い…。辛い。けど、すごい好きです!無理されないで更新されてください!続き待ってます! (2019年10月10日 19時) (レス) id: 78c574c661 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年9月21日 18時

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