陌拾漆 ページ24
「本当にお世話になりました。」
「いえいえ、私も良い経験になったよ。」
早朝、出発する時透君の為門まで見送りに来ていた。
背筋をピシッと伸ばし、此方を真っ直ぐに見つめる彼は凛々しくなったように思えて、素直に嬉しかった。
「鴉ちゃん、彼を宜しくね。」
「フン、任セナサイ! 貴方モ精々気ヲ付ケナサイヨ!!」
「うん、有り難うね。」
「それじゃあ、僕は行きます。えっと、暉峻…」
「あ、ちょっと待ってくれる?」
不思議そうに彼は首を傾げる。懐からまだ一度も使っていない手帳を取り出し、簡単に彼の課題点を書き記していく。
そして最後に日付と名前を記入して、彼に差し出した。
「はい、これをあげる。これがあれば、忘れても思い出せるでしょう?」
昨夜梓月と相談した。彼が今日の鍛練の事を忘れない為にはどうすればよいかを。
「…良いんですか?」
「うん、その手帳の事は忘れないように気を付けてね。それと今の内に刀鍛冶の里に行けるよう申請しておいた方が良いと思うよ。
あ、そう言えば彼処には縁壱人形っていう訓練用の絡操人形があってね。中々良い経験になるよ。鴉ちゃん、宜しくね。」
「ワ、分カッタワヨ! ソレモコレモ全部私ニ任カセナサイ!!」
「ふふ、頼もしいね。それじゃあ、また会いましょう。」
「…思い出した。Aさん、次会った時はまた稽古付けて下さい。」
「ええ、勿論。引き止めてごめんなさいね。それじゃあ、気を付けて。」
時透君は一礼して、次の瞬間には走り出していた。その後を慌てて鴉ちゃんも追っていく。
「…行っちゃったね。」
「オイ、ソロソロ俺達モ準備スルゾ。約束ノ時間ガ迫ッテキテイル。」
「うん、そうだね。中に戻ろうか。」
「…ソレデ、記憶ハ取リ戻セタノカ?」
「……まぁ、少しはね。」
「何、本当カ!? 何処マデ思イ出セタンダ?」
「彼と、戦っている時、不思議と何度も懐かしいと感じたの。
けれども違う。こんな
「…ソウカ。ヤッパリ接触シテ正解ダッタナ。」
「うん、これからも繰り返し会えばまた何か思い出すかも。…って、もうこんな時間! 梓月、行くよ!!」
「へイヘイ、分カリマシタヨオ嬢サン。」
何処までも晴れ渡る青空の下で、一人の少女と一匹の鴉が駆けていく。
完成まで、あと僅かだ。
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酸漿(プロフ) - きなこ餅さん» 有り難う御座います。これから続編を書いていくので、そちらの方も是非お楽しみください。 (2019年10月20日 21時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ餅 - たくさん伏線がはられていて、読む度にドキドキします! これからも更新頑張って下さい! (2019年10月19日 21時) (レス) id: 3d1d19266b (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 神桜佳音さん» 嬉しいコメントありがとうございます(^-^)励みになります。これからもどうか宜しくお願いします。 (2019年10月13日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
神桜佳音(プロフ) - ようやく納得しました…!話が深い…。辛い。けど、すごい好きです!無理されないで更新されてください!続き待ってます! (2019年10月10日 19時) (レス) id: 78c574c661 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年9月21日 18時