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陌玖 ページ16

「それじゃあ、鱗滝先生行ってきます!」


「あぁ、日暮れまでには帰って来なさい。」


大きく手を振ってから、義勇の傍に駆け寄る。


「お待たせ。それじゃあ行こうか。」


彼は小さく頷き、二人で歩き始めた。







薄紅色の優しい色合いが美しい団子を前に、思わずうっとりとした声が漏れる。


ゆっくりと口に運べば、甘さ控えめなさくら餡に桜の塩漬けの塩気が後を引いた。


「………!!」


声にならない声で呻きながら、頬っぺたを両の手で押さえる。


あまりの美味しさに体が震えてしまった。思わず笑顔がこぼれ、もう一つ口に運ぶ。


「お客さんみたいな別嬪さんに喜んでくれると本当に嬉しいねぇ。ほら、これをおまけしておくよ。」


団子を運んできてくれた女将が市紅茶(しこうちゃ)色の餡がたっぷり乗った団子を一本追加してくれた。


「お連れさんは恋人かい? ほんと、若いって良いねぇ。お前さん、しっかりこの子を守るんだよ!」


女将さんは豪快に笑いながらバシバシと義勇の背中を叩いて、その場を後にした。


「……美味しいか?」


「うん、凄く美味しい! 義勇 連れてきてくれて有り難う!!」


満面の笑みで返せば、珍しくふわふわとした笑顔を返してくれた。


すると突然すっと表情を変え、私の髪飾りに手を伸ばす。


「これ、どうしたんだ?」


「あぁ、これはね、実弥から貰ったの。」


女将さんに貰ったほうじ茶餡の団子を頬張りながらそう答える。ほうじ茶本来の香りとほのかな苦味が堪らない。


普段は鍛練の邪魔になるからと付けていなかったので、今日初めて見たのだろう。だが彼は何故か少し顔を曇らせ、そっぽを向いてしまった。


「……先を越された。」


ぽつりと呟いた言葉に、首を傾げる。


「A、少し後ろを向いて貰っていいか?」


頷いて言われるままに後ろを向けば、何かを取り出す音がして少し髪を引っ張られた。


「…よし、もう良いぞ。」


振り返って、髪を結ってある辺りを触る。其処に、何かがきつく結ばれていた。


「これは…」


義勇の瞳に映る自分の姿をよく見ると、真っ白なリボンが不器用に結ばれていた。


「うん、よく似合ってる。」


そう言って彼は柔らかく微笑み、自然と胸の辺りがじんわりと温かくなった。


「これを、私に…?」


「あぁ、お前にずっと渡そうと思っていた。」


その言葉が嬉しくて 有り難うと微笑めば、彼も嬉しそうに破顔した。

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酸漿(プロフ) - きなこ餅さん» 有り難う御座います。これから続編を書いていくので、そちらの方も是非お楽しみください。 (2019年10月20日 21時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ餅 - たくさん伏線がはられていて、読む度にドキドキします! これからも更新頑張って下さい! (2019年10月19日 21時) (レス) id: 3d1d19266b (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 神桜佳音さん» 嬉しいコメントありがとうございます(^-^)励みになります。これからもどうか宜しくお願いします。 (2019年10月13日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
神桜佳音(プロフ) - ようやく納得しました…!話が深い…。辛い。けど、すごい好きです!無理されないで更新されてください!続き待ってます! (2019年10月10日 19時) (レス) id: 78c574c661 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年9月21日 18時

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