検索窓
今日:8 hit、昨日:6 hit、合計:456,756 hit

ページ11

「此処だけの話だ。」


隣の部屋にいる三人はもう寝てしまっている。地鳴りのような鼾がその証拠だ。三人の内の誰かの寝相が悪いのか、偶に呻き声も聞こえてくる。


「えぇ、誰にも話したりしませんよ。」


一つのランプだけを灯した暗い部屋で、私は初対面である音柱、宇髄天元に相談を持ち掛けられていた。


「場所は言えない。だが其処に鬼が棲んでいる事は確かだ。」


「…それは十二鬼月の可能性が高いのですか?」


「あぁ、そうだ。目星を付けた後、あいつらを潜入させようと思っている。」


「まさか、吉原にある遊郭ですか?」


「いやいやいや、ちょっと待て。勘が良すぎないか?」


「やはり彼処ですか。…少し待っていて下さい。」


鴉、そう呼びかければ ちょこちょこと寄ってきてくれる。そしてその首元に括り付けられた筒からあるものを取り出す。


そして畳み込まれていたそれを、大きく広げた。


「おい、これは…」


それは、ここ百年の柱の情報。彼等が集めてきた十二鬼月の情報、そして彼等の死因が載っている。


「これによると、あの遊郭で亡くなったと思われる柱は、この百年の中で四人。そして何れも単体で潜入している。」


それが示すのは、つまり。


「十二鬼月、その中でも上弦の鬼の可能性が高い、って事か。」


彼は溜め息をついて俯いた。


「それにしても、どうしてそんな貴重なものを持っているんだ?」


広げたそれを丁寧に戻しながら、妖艶に微笑んでみせる。


「乙女の秘密、とでも思っていて下さいな。」


「あー、それは詮索出来ねぇな。」


彼は頭をがしがしと掻いて、じっと此方を見つめた。


「俺は正直恐い。」


その場が、静まり返る。


「…それは、戦う事がですか?」


「いいや、違う。…相手が上弦の鬼だった場合、先に潜入させる嫁達の命が危ない。」


「…愛しているんですね。とても良いことだと思います。」


「だからこそ、折り入ってお願いがある。」


彼は覚悟を決めた 真剣な表情で此方を見つめた。


「力を、貸して欲しい。」


そう言って頭を下げた彼に向かって、微笑む。


「それで救われる人がいるのなら、私は喜んで力を貸しましょう。」


勿論今日の事は内密にしておくのでご安心下さい、そう言って悪戯っぽく笑ってみせる。


何処と無く安心した様子の彼を見て、改めて愛する者を危険に晒す覚悟の重さを知った。

什→←捌



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (186 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
483人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 ,
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

mikki-(プロフ) - 酸漿さん» ひぇ……お友達さん絵が上手すぎやしませんか????貴方の作品もお友達さんの絵も好きです応援してます!! (2019年7月29日 19時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - mikki-さん» 友達が書いてくれたものです。登場人物紹介に載せているのは、角&耳っこメーカー様からお借りしたものです。紛らわしくてすみません。 (2019年7月29日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
mikki-(プロフ) - 初めまして。質問なのですが、表紙のイラストは酸漿様が描いたものなのですか?教えて下さい (2019年7月29日 18時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 金糸雀さん» その通りです。夢主の母を鬼にしたのも彼です。彼は自ら会いに来るまでは待つ、という約束を律儀に守っています。 (2019年7月7日 20時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - まさか、過去の話に出てきて鬼は上弦・壱ですか? (2019年7月7日 1時) (レス) id: 359e27b0ea (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:酸漿 | 作成日時:2019年6月16日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。