Ep.158 割に合わない ページ8
私は眉ひとつ動かさず答えた。
「船を降りた
「あら、それじゃ自分が助かるなら彼を殺しても構わないって言っているのと同じよ?」
「そう言ってますから」
「アハハ! あっさり捨てられちゃったわね、ボック。でも残念……あなたたちが共犯なら今後も生かしておくわけには行かないわ」
「おいッ、待て……!!」
約束は“船を降りるまで”であって、その後どうなろうが約束の範疇には含まれていない、と。
一度判を押してしまえば契約を飲んだ方にも責任があると言われても反論しきれない。契約前の確認が大事だと私もよく教えられた。
さて、とため息を吐いてひとつ訂正する。
「共犯……っていうのはだいぶ語弊があるんですけど」
ポケットに両手を入れて、私はあえて一歩前に踏み出す。比喩表現抜きで目と鼻の先に銃口があった。
「ただ、実はそっち側に戻る気もなくてさ。命乞いをする予定はないんだ」
私も父さんと同意見だ。丸腰で彼女に勝てるわけがない。こちらが何かしようと動いた次の瞬間にはもう手遅れだろう。
諦める場面だ。
怖くはなかった。今までもずっとそう。私は命を失うことを恐れてはいない。
不思議だった。けど、原因をうっすらと理解し始めていた。
頭の片隅にある可能性のせいなのだと。
全てが不確定だからこその"死ねば元の世界に帰れるんじゃないか"というひとつの想像があるからだと。
それはきっと、夢から覚めるように。
「(これがクライマックスなら……結果はどうあれ、悪くないか)」
ベルモットは内心単純な驚きを覚えていた。
まだ幼い少女の瞳の中の光には、怒りも恐怖もなかったからだ。ひたすらに凪いだ目。いっそ誠実さすら覚えるほどの素直で敵意のない眼差し。こちらを見上げるその目はあまりにも涼やかだった。
「……言い残すことは?」
「特には」
「そう」
引き金に力を伝える。
澄んだ瞳を見返す。決して揺るがない、力強い瞳────
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サラキ(プロフ) - 完結おめでとうございます。長期間の連載、本当にお疲れ様でした。とても素敵な作品を読ませて頂いてありがとうございます。これからも応援しています。 (2022年10月17日 16時) (レス) @page24 id: 8b491ab3be (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - 完結おめでとうございます。占いツクールでこの作品を投稿してくださり本当にありがとうございます。知ったのは遅かったですが、完結前に応援を出来たこととても嬉しく思います。 ほろにがクラゲ様 の今後の活動を心より応援しております。本当に長い間お疲れ様でした。 (2022年10月11日 17時) (レス) id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - わざわざ返信ありがとうございます!ログインしていない時にコメントしたのでIDは違いますが、本人です。私も文を見返してアホだなぁと笑ってしまいました🤭 (2022年10月6日 21時) (レス) id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてとっても嬉しいです(~*ˊ꒳ˋ*)~ ちょっとでもリアリティを感じてもらえたらと書いております☺️すみません、突然の誤字にちょっと笑ってしまいましたw (2022年10月3日 10時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
m - 文、変に語彙ってしまいました。すみません🙇♀️ (2022年9月28日 4時) (レス) @page3 id: 721fbfd58e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年9月27日 16時