Ep.159 瓦礫の山 ページ9
────が、消えた。
「うおゎッ!?」
唐突に背後から足払いをかけられたAは、吹っ飛びかねない勢いで体勢を崩した。
その陰に隠れて拳銃を抜いたボックがベルモットを見上げ笑う。
「ボック……!」
「……やるならやるって言ってよ、父さん」
その言葉を聞き終える前に、視界外から放たれた蹴りがベルモットの手首を弾いた。手元を離れた拳銃が壁に跳ね返って床を滑る。それを飛び込むようにして拾ったのはAだった。床を転がり、起き上がって両手で構える。
「また頭打ったんだけど?」
「穴が開くよりいいだろ」
「……いいコンビネーションだわ。けどまだろくに見えていないでしょう? 勘で動いてるに過ぎないボックは戦力外……今、私を撃てるのはあなただけ」
────あなたに撃てるかしら?
挑発とも思える言外の意味にAは言葉で返した。
「当たらないかもね」
その目はフロントサイト越しに目標を見据えている。
しかし、平坦な声音と裏腹に内心では迷っていた。
「(どうすればいい……?)」
実銃など撃ったことのない素人の射撃だ、まず当たらないだろう。けど、当たってしまったら? この人はここで死ぬのか?
迷っているヒマはない。父さんはきっと撃てると思ったその瞬間に引き金を引く。
本当にないのだろうか。
彼女を殺さずに済む方法は。
「(……ベルモットほどの人を相手にいっそ傲慢だとは思うけど……)」
殺してしまうわけにはいかない。この世界に彼女はまだ必要なハズだ。
緊張で息を飲む。
「(……説得、するしかない)」
拳銃を下ろすために引き金から指を抜いた。
その瞬間。
嫌な音が、上から聞こえた。
放射状に亀裂が入る天井を見上げる。それは瞬く間に広がり、限界を超えた次の瞬間、パズルをひっくり返すように────
「A!!」
名前を呼ばれた。
咄嗟に足が動いた。
声の方へ、声のした方へ、走る。
「父さ────ッ」
背を掠めるような轟音が降り注ぐ直前、扉が開けっ放しだった部屋に飛び込んだはずだが、土埃が目や喉に刺さってむせ返りしばらくは状況が何も分からなかった。
少しずつ煙が晴れる中で、崩落した天井の残骸が見えた。
瓦礫は一瞬にして、あちら側とこちら側……部屋の内外を完全に分断していた。
「こいつはなかなか……」
気が付くとそばにいた父さんが呟いた。私も同じように瓦礫の山で歪み塞がった出入口を見上げる。
────……どうしよう、コレ。
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サラキ(プロフ) - 完結おめでとうございます。長期間の連載、本当にお疲れ様でした。とても素敵な作品を読ませて頂いてありがとうございます。これからも応援しています。 (2022年10月17日 16時) (レス) @page24 id: 8b491ab3be (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - 完結おめでとうございます。占いツクールでこの作品を投稿してくださり本当にありがとうございます。知ったのは遅かったですが、完結前に応援を出来たこととても嬉しく思います。 ほろにがクラゲ様 の今後の活動を心より応援しております。本当に長い間お疲れ様でした。 (2022年10月11日 17時) (レス) id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - わざわざ返信ありがとうございます!ログインしていない時にコメントしたのでIDは違いますが、本人です。私も文を見返してアホだなぁと笑ってしまいました🤭 (2022年10月6日 21時) (レス) id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてとっても嬉しいです(~*ˊ꒳ˋ*)~ ちょっとでもリアリティを感じてもらえたらと書いております☺️すみません、突然の誤字にちょっと笑ってしまいましたw (2022年10月3日 10時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
m - 文、変に語彙ってしまいました。すみません🙇♀️ (2022年9月28日 4時) (レス) @page3 id: 721fbfd58e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年9月27日 16時