メタ推理で犯人当てたらJK探偵とか呼ばれだした【名探偵コナン】

Ep.05 犯人の犯沢さん ページ5

「現実…………か」

そう呟いた途端、静かな部屋から外へ出たときのように、環境音が一斉に耳へ脳へと飛び込んできた。

現実なのだ。よく分からないけれど、夢ではない。

ここはきっと漫画の中の世界。

名探偵コナンの世界だ。

「…………事実は小説よりも奇なりってやつか……」

……私、せっかく蘭と園子に会ったのに、チャンス逃したんだな。

ここが本当に米花町であるなら、あの二人も本人に違いない。毛利蘭、鈴木園子。どちらも名探偵コナンのメインキャラクターだ。

うーん、あんな一瞬じゃ顔も覚えてくれてないだろうな……いや、盛大にぶつかって転んだ女として覚えられるのは、ちょっと嫌だ。



……名探偵コナンといえば、漫画時空とリアル時空を無理やり擦り合わせて事件の件数を計算したデータを見たことがあるのだが、アレはなかなかインパクトのある情報だった。ある計算によれば一日に一人は人が死んでいるとか。

しかもアレ、コナンくんが関わってる事件に限っての話だからね。

実際どうなんだ米花町。一日に何十人死んで何人の犯罪者が検挙されてるんだ。

犯人が主人公のスピンオフ「犯人の犯沢さん」も少し読んだけど、実際そういう町に住むとなるとアレもそうそう馬鹿にしたものではないのかもしれない。私だって防犯機能の着いたスマホほしい。

待てよ、これ「犯沢さん」の世界だっていう線は……！

……ないな。さすがに。




それにしたって本当に、どういうことなんだろう。

カバンを肩にかけ直す。なんだか街の風景は、知っているような全く知らないような雰囲気になっていた。既視感はあるけれどよく見れば知らない場所だ。

近所のどこかに似ているのかもしれないし、漫画かアニメで見た景色なのかもしれない。どちらもハッキリとは覚えていない分、判断がつかない。ただ、ひとつひとつの店や看板が、見聞きしたことの無い店名、地名を載せであることが現実味を薄れさせる。

……これからどうしよう。

帰るための方法はもちろん探すけど、それまではここで生きなきゃならない。

生きる術が必要だ。

現実的に、大人のように。

一人でじゃない。何かに頼って生きる方法を。

その為に、何に頼ればいいのかを考えないといけない。

これまで頼っていたものは……家は、親は、居場所は、何もないのだから。

……そう思うと、自然とまた不安が頭をもたげた。

本当に私、大丈夫なんだろうか。





俯いた私の横を、小さな影が後ろから駆け抜けた。

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