検索窓
今日:2 hit、昨日:80 hit、合計:10,536 hit

27 ページ27

いや…したのかな…
聞こえなかっただけなのかな…

僕のせいでAが花火をみんなと楽しめないのは嫌だ。

「僕は通信機の調整をしているから、Aはみんなとっ…」

旋回窓に花火の球が見えまた音が来ると体が強張ってしまう。

「!!」

僕の持っていたペットボトルをAが取ると優しく耳に押し当ててくれる。

ドン

Aの背後で大きな黄色い花火が咲くと、トントントンとヘッドフォンをAがそっと優しく指で一定のリズムで叩く。

「みみ は だいじょうぶ ですか」
「!!」

モールス信号で僕を心配そうにAは見つめて会話をしてくれる。

いつ気づいたのか、顔には出ていなかったと思うが…
Aは診察の時になると異常なほどの洞察力を発揮させるからもしかしたら…僕の違和感に医師として気づいてくれたのかもしれない。


Aはそのままペットボトルを赤子の頬でも突く様に触れモールス信号で僕に言葉を伝える。

「羽京さん と はなび が みたいです」
「!!」

にっこりと笑って「羽京さん が よければ ここで 一緒に」と口を動かしながら伝えられる。

「っーー…外で見た方が綺麗だよ」

旋回窓だと花火は途切れてハッキリとは見れない。
そう伝えても、僕と見たいと伝えてくれる優しいAに泣きそうになる。

「ありがとう、僕もAがいいなら一緒に見たい」
ヘッドフォンの上から守る様に手を重ねてくれているAの手に自分の手を重ね握る。

「こっちで見よ」

少しでもよく見える様にAの手を引いて旋回窓の前に行くと、Aは心配して窓から僕を遠ざけようとする。

「大丈夫だよ、ヘッドフォンもしてるし、これぐらいなら…それにAとちゃんと花火を見たいんだ」

家族以外でこうして誰かと花火を見るのは初めなんだと伝えるとAは握っている僕の手をトントンと叩いてモールス信号言葉をまた伝えてくれる。

「ぼく も はじめです」

微笑むAに釣られて僕も微笑んでしまう。
クライマックスなのか数え切れないほどの花火が沢山上がり花火同時が重なる。

それをAは目をキラキラさせて見つめていて、生の花火を見るよりもAの瞳に映る花火の方が何倍も綺麗で音を気にせすいつまでも見てられる。

みんなこんな気持ちで花火を見てたのか、うるさい音に我慢してみる価値はあるとAのジッと見つめる。

28→←26



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (22 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
98人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

風夏(プロフ) - いつの日か続き楽しみにしてます^_^ (4月8日 22時) (レス) id: a7ba8ebdd3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:クリーム | 作成日時:2023年12月29日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。