表象的コンテクスト【オリジナル短編集】 (ページ22)

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殺生ページ22

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明かりの灯る一際高い塔。何だったか。確かバベルとか何とか言っていた気がする。それは神である私ですらも感嘆する程で、人間はすごいなぁ感が拭えない。それにしてもキレイな塔だ。ラプンツェルとやらに出て来る塔の三倍はあるのではなかろうか。ただしこの高い塔は日照権とやらでは邪魔物扱い待った無しであろう。

日陰になる土地はさぞかし大変であろう。作物は育たないし。塔はこの付近の建物の中でも一等高く、避雷針の役割を果たしているようにも見受けられる。宗教物がそんなものに使われているのは不服ではあるが、ヒエログリフ的な考えに依存できないためであると思う。人間の妄信を一々相手にするのも骨が折れるであろうから、この位が丁度いいのかもしれない。

罪だなぁ、私も。小さき生命にこんな大層なものを作らせてしまって。創作した人間はさぞかし大変な苦労を強いられたであろう。その苦労は神である私でさえ、計り知れない。建築基準法はおそらく匙を投げた、もしくは範疇外か。どちらにしろ、神様という後ろ盾には敵わないのだろう。それはやはり神としても心外に思う。

それを理由に避雷針がわりの建築基準法を無視したバベルなんちゃらの上空に積乱雲を呼び寄せてみた。そうしてそのままプラズマを発生させ、塔に一直線に振り下ろした。うねるような轟音が鳴り響く。塔がいとも簡単に音を立てて崩れた。だが、悲しまないで欲しい。破壊から生まれる創造もある。塔が壊れたことによって公共事業が生まれ、失業者はさぞかし減るであろう。これも幸せには必要なことなのだ。

小さき生命たちは声を荒げた。神のお怒りが祟ったのだとか、悪魔の襲来だとか口々に異口同音を唱えた。祈りの場の教会ではそのような人々の心傷を和らげた。実質、洗脳と変わらない気もするが。これではどちらが悪魔か分からない。未来への希望？そんなもの気休めにもならないまやかしに過ぎない。

全ては人々が作り出した空想だというのに。神も人間が作り出したもの。そうこの私を作ったのは紛れもない人間。これではどちらが生みの親か分からない。卵が先か鶏が先か。これは確か昔吟味したはずだ。それにのっとるなら、煉獄も桃源郷も人が織りなす想像の域を出ないもの。本気で信じているなら狂っている。

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