表象的コンテクスト【オリジナル短編集】 (ページ1)

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ロゴスにばかり囚われないでページ1

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「涙の中にはね、妖精の国があるんだよ。」

彼女がそう口にするとみんな笑った。彼女は悪びれもせずに首を傾(かし)げる。そうして何人かの生徒が彼女を好き放題に罵(ののし)った。彼女は自分を罵る言葉を綺麗で大きな瞳で聞き入っている。それを気に食わなく思ったのか、さらに怒号を飛ばす男の子。彼は先生に彼女を殴ろうとしたところで止められてしまった。

「涙の中にはね、妖精の国があるんだよ。」

彼女がそう口にするとみんな苦笑いを零した。彼女は困ったように微笑む。そうして何人かの生徒が彼女におもしろ可笑しく、彼女に詰め寄り、訳を聞きたがった。「どうしてそんなおもしろいことを言えるの？」と馬鹿にしたような彼等には彼女の純粋無垢な考えは理解できなかった。

「涙の中にはね、妖精の国があるんだよ。」

彼女がそう口にするとみんな不思議そうに首を傾げた。彼女は無表情で何の感情も読み取れなかった。そうして彼女の友達は驚いた表情で彼女が口にした言葉に戸惑うのだ。彼女から次第に友達が離れて行った。友達は彼女を不気味に思った。

「涙の中にはね、妖精の国があるんだよ。」

彼女がそう口にするとみんな彼女をじろじろと見て、ひそひそと囁いた。彼女は至って真剣でさらに周りを混乱させる。「頭がおかしい子だ」と彼女を訝しげな目で見つめる。彼女の言うことを理解しようとする者は一人としていなかった。それどころか不気味がって医者を彼女に勧めた。

「涙の中にはね、妖精の国があるんだよ。」
「そうなんだ。知らなかったよ。どんな所か良かったら聞かせてくれる？」

彼女にとっての初めての理解者。彼は目を細めながら彼女の話に聞き入った。彼は彼女を馬鹿にしたり、不気味がったりはしなかった。ただ彼女の話を隣に寄り添って静かに聞いていた。

あなたに嫌いな人はいますか？あなたはその人を理解できましたか？彼女は人に理解して貰えませんでした。それでもそのうちに理解する人ができました。人を嫌うな、とは言いません。ただバカにして欲しくないのです。

時間を掛けてもいいから、嫌いな人の考えを理解しようと努めて下さい。そうすればあなたもきっと少しだけその人のことを許せるはずです。