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シュピネンゲヴェーベ ページ16

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真っ黒な世界で目が覚めた。暑くもなく、寒くもない。丁度中間というわけではなく、温度が感じられないという意味だ。天も地もなく、本当の闇だ。見分けがつかないというだけであって現に私は目を覚まし、こうして闇を取り入れているわけだから、どこかに境目があるのだろう。だからといって地面があるかどうかも怪しかった。頭は私が立っているという信号を送ってくるが、本当かどうかは分からない。何せ光がないのだから、自分の足元さえ見えないのだから。

しかし頭を信じるとするなら、私は立っている状態にある。足の裏は柔らかい羽毛のような感覚を伝えてくる。どうやら、私は裸足らしい。

そこまで現状を理解した途端、何故か一歩を踏み出した。無抵抗の一歩。私が気がつきもしなかったということはいつもと同じ感覚だ。重力は同じらしい。ほっとした。

ほっとした?


溜息を吐こうと肺に息を取り込んだはずなのに、息を吸った感覚も吐いた感覚もない。

息をしてない?

癖で手を当てた心臓のあたりからはいつものような鼓動がしない。心臓が動いていない。ゾッとした。もしかしなくても私は死んでいるのかもしれない。いや、死んでいるのだ。そう言われれば先ほどから温度を感じない。そういうことだろう。するとここは死後の世界ということになる。死後の世界というのはもっと絵に描いたような天国や地獄といったものがあると思っていたが、実にがらんどうとしている。ただ虚無と闇が広がる亜空間のような場所。

何だか死後の世界はつまらない。神様がいるのなら手抜きかと文句の一つも言いたくなる。そこで生前の記憶を思い出した。そうだ、彼奴は。

「ここですよ。」


シュルシュルと気味の悪い音が背後で聞こえた。わざと振り向かずに話しかける。振り向いたとしたら彼の目に「魅せられる」だろうから。突然、身動きが取れなくなる。彼が何かで縛ったのだろう。自身の御者として作り出したはいいが、何せこの暗黒世界ではすることがそもそもない。突如体が勝手に動き始める。おそらく彼奴が動かしているのだろう。しばらくすると頭に地面とは違う温かみが触れた。先ほどまでは感じなかったはずなのに。見上げると彼奴が黄色く目を光らせ、薄ら笑いを浮かべていた。

死願の果てまで。→←縛愛症候群


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  • 恋愛運: ★★★☆☆
  • 健康運: ★★★★★
  • 全体運: ★★★☆☆


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(´・ω・`)Love(プロフ) - 鵯さん» リクエスト消化してくださりありがとうございます!流石鵯さま、期待以上のお話が読めて嬉しい限りです。良ければまたリクエストさせてくださいね。ありがとうございました! (2017年12月29日 19時) (レス) id: e516045fa3 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - (´・ω・`)Loveさん» 大丈夫ですよ。ありがとうございます。気長にお待ちくださいませ。 (2017年12月28日 21時) (レス) id: 10532b6a12 (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`)Love(プロフ) - 鵯のさえずりというページは消されたみたいですけど、リクエストってまだ受け付けてますか?もし大丈夫でしたら飴の出てくるほのぼのとしたお話が読みたいです!……こ、こういうリクエストも平気ですか? (2017年12月28日 10時) (レス) id: e516045fa3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年12月20日 18時

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