毒リンゴ ページ14
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女性は願った。子どもが欲しいと。
雪の降る冷たい路地裏で寒さを凌ぐこともできず凍え続けている。
彼女はもう長くないことは表情を見れば一目瞭然だ。だが、それでも彼女は美しかった。
ガラスのように透き通った肌。さらりと流れる錦糸のような金の髪。春の青空を切り取ったような瞳。苺のようにみずみずしい唇。
死にそうな女性は周りの人間が壊したくなるような美貌を兼ね備えていた。
そんな彼女は幸か不幸か神にまで愛された。
彼女の願いが天に届き彼女は子どもを授かったが、結局彼女は長くは生きなかった。
殺されたのだ。誰かに。
その日から変わった人間が夜な夜な夜の街を徘徊するようになった。
真っ暗な夜より魅力的な髪。
貝殻のように滑らかな肌。
ザクロのように甘やかな唇。
だが、ローブを纏っており、女か男かの区別がつかない。背は高くもなく、低くもない。
ただ、いきなり尋ねてきて、リンゴを売りさばいていく。そしてそれを食べた人間はそのリンゴを何を犠牲にしても欲しがった。まるで中毒症状だ。
どんなに調べても証拠一つ出てこない。
実際に魔のリンゴもあるし、中毒症状も存在する。例の人間の目撃情報もあるが、怪しい人間まで絞り込めない。
それもそのはず。その人間には戸籍がなかった。貧しく神に愛された女の娘。
だが、娘は神ではなく、悪魔に愛された。悪魔までも魅了した彼女は貪欲に罪に呑まれていく。
人は彼女を後にこう呼んだ。白い雪のように跡形もなく幻想のように去っていく。すなわち白雪姫と。
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作者名:鵯 | 作成日時:2017年9月18日 11時