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名前を名乗った途端、河童と一つ目小僧が驚いた様な顔をした。
そして、河童に至っては俺を凝視してくる。

「………」

「えっと…」

一切視点を逸らさないその大きな目に、少し恐怖を感じた。
見られ続けることに慣れていないというのもあるが、俺は我慢が出来ずに男の後ろに素早く隠れた。

「!?」

「うおっ!急になんだよ、幻太郎!」

「いえ……」

仕方ない。仕方がないのだ。
河童には申し訳ないが、普通に怖い。

「河童、幻太郎に悪気は無い。許せ」

「……」

少し肩を落とした様子を見せる河童に、罪悪感を覚えた。
俺は顔だけ男の肩から覗かせ、声をかける。

「あ、あの、河童…さん?
ごめんなさい。隠れたりしてしまって…」

「……、……………」

喋っている。けれど全く分からない。
俺は狐と海坊主に視線をやり、目で通訳をして欲しいと訴えた。

「うむ。では小官が……河童は、オイラは見た目が怖いから、仕方がない……と言っている」

確かに、他の妖怪のように人の形からは遠い。
河童だけ‘完全なる異形’なのだ。

けれどそれは見た目だけで、中身は誠実な者らしい。
その証拠に、深々と頭を下げている。

「いえ、怖がってしまってすみません」

俺も男の後ろから出て、頭を下げる。
すると河童の口角が少し上がった気がした。笑ったのだろうか…。

「……河童も一つ目も、会えてよかったな」

狐が何か言っているが、声が小さくてよく聞き取れなかった。
しかしそれは男と俺だけらしく、妖怪たちは霊鬼を覗いて皆笑顔だ。

「さて、後処理も終えたことじゃ。
わしは皆と一旦社に戻ろう」

「え!?」

「何、日没には戻る。
だからそんな顔をするでないぞ、幻太郎」

「んっ…」

頬を撫でられ、顔が火照るのを感じた。
というか、俺はどんな顔をしていたのだろうか。気になる。

「……夕飯、作って待ってますね」

「あぁ、分かった」

そう言って狐を先頭に、妖怪たちは家から出ていった。
残されたのは、男と俺だけだ。

「何か俺、凄い体験しちまったなぁ…」

「そうですねぇ……」

何故だろう。少し悔しい。
狐の存在も、座敷童子や他の妖怪たちの存在も、俺だけが知っていられたら…なんて思ってしまった。

「人は、欲深く浅ましい生き物…」

「ん?どうした?」

「いえ、何でもありません。
それよりも帝統、タダ飯で帰るつもりはありませんよね?

ちゃーんと、‘お手伝い’して下さいね」

「ゔっ……はい」

肩を落として沈む男を傍らに、俺は夕飯の献立を考えていた。

弐→←陸ノ巻 月夜の朝



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ふぃっく - 一番気になるところで終わるのがウズウズします!!!!!!ぜひ続きを書いてください! (2023年4月16日 14時) (レス) @page38 id: 634615dde5 (このIDを非表示/違反報告)
心春(プロフ) - ロールロールさん» コメントありがとうございます。最近更新出来ずに申し訳ありません…。近々更新致します。あたたかいお言葉ありがとうございます。 (2020年4月5日 12時) (レス) id: 3f9e794f84 (このIDを非表示/違反報告)
ロールロール - はじめまして!とても楽しみに更新待ってます!体調管理に気をつけてください!応援してます。頑張ってください。 (2020年4月5日 0時) (レス) id: d8adda4a88 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:心春 | 作成日時:2020年1月12日 9時

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