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茜色の空。
音も、風もないこの場所には妖が集まる。

「お帰りなさいませ、我らが主、A様」

一尾狐が社前で深々と頭を下げ、主である狐を出迎えた。

「用が済めばまた出る。
一尾、皆は中に居るのか?」

「はい、大広間に集まっております」

「そうか。では行くぞ」

共に帰ってきた者たちを引連れ、狐は大広間へと向かう。
着くとそこには数多くの妖が居て、皆狐の姿を見るなり頭を下げる。

その真ん中を堂々と歩き、中央奥に腰掛ける。
座敷童子たちは他の妖たちに紛れる様に、それぞれ座る。

海坊主だけは狐のすぐ側だ。

「良いぞ。面をあげよ」

その声とともにザッと皆顔を上げる。
それはもう慣れている者たちの動きだった。

「わしに忠義を誓ってくれるのは嬉しいが、堅苦しいのぉ」

「仕方ありません。慣れてください」

「ふぅ………で、わしがいない間に何か問題はあったか?」

「いえ、特に問題ありませんでした」

いち早く答えたのは山天狗だった。
相変わらず真面目な男だ、と狐は思っただろう。

「そうか、ならば良い」

「………あ、あの〜…A様の、奥様のご様子は……?」

猫娘が恐る恐る手を挙げ、質問した。
それに対して返答したのは狐ではなく、霊鬼だ。

「ハッ!!あんな人間が大将の配偶者だなんて、俺は認めねぇ…。
大将を拒みやがった奴を…認められねぇ」

その霊鬼の発言に、一部の妖がざわついた。
それもそうだろう。彼等からしたら、慕っている狐を拒むということはありえない事なのだ。

「……新参者が、大きな口を叩いてんじゃねぇぞ」

「あ゙あ…!?」

「お前たちは、前の奥方を知らないからそう言えるが……あの御方は、そこらの人とは違う」

「……何が違うんだよ。羅刹[らせつ]の旦那」

「あの御方は、他の人間のように俺らを‘恐れない’、‘蔑まない’。
全く同じなのだと、人も妖も変わらぬ命だと言った……そんな懐の深い御方だ」

「なんだそれ。そんなの綺麗事だろう。
っていうか、人を食らっている旦那が人の味方するなんてな」

「だから、あの御方は…」

「老いぼれ爺の言葉なんぞ聞いたところで、どうにもならねぇ。俺は俺が!見たものを信じている」

「誰が老いぼれだ若造……俺ァまだ千年ほどしか生きてねぇ」

「ハハッ!充分爺だろ!」

「霊鬼の言う通りならば、小官もAも爺だな」

その海坊主の言葉に、その場が静まり返った。
そして、霊鬼は顔を青くさせている。

参→←壱



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ふぃっく - 一番気になるところで終わるのがウズウズします!!!!!!ぜひ続きを書いてください! (2023年4月16日 14時) (レス) @page38 id: 634615dde5 (このIDを非表示/違反報告)
心春(プロフ) - ロールロールさん» コメントありがとうございます。最近更新出来ずに申し訳ありません…。近々更新致します。あたたかいお言葉ありがとうございます。 (2020年4月5日 12時) (レス) id: 3f9e794f84 (このIDを非表示/違反報告)
ロールロール - はじめまして!とても楽しみに更新待ってます!体調管理に気をつけてください!応援してます。頑張ってください。 (2020年4月5日 0時) (レス) id: d8adda4a88 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:心春 | 作成日時:2020年1月12日 9時

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