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「い、いえ!そんなことは御座いません!
爺というのは、羅刹に言った言葉!!
決して御二人に向けたものでは…!」

手を揃え、頭を下げ、土下座をして謝る霊鬼。
再び己の失言、失態で狐の機嫌を損ねたと思っている。
しかも、今回は海坊主もだ。

「霊鬼、例えわしに放った言葉だったとしても、怒らんよ。
海坊主も、いじめてやるな」

「すまない、その場を鎮めるには的確だと思ったのだ」

「……確かに、静まりはしたのぉ」

ただでさえ張り詰めていた空気が、更に重くなった。
それだけ、‘この話題は’重要なのだ。

「幻太郎が一度死んだあの後から、わしの元に来た者が幻太郎を否定するのは仕方の無いことかもしれん。
だけどな、どんなに皆に否定されても……わしは幻太郎以外を愛することも、愛せる自信もないのじゃ」

その言葉に、猫娘は素敵…と呟いた。

「……ですが、生まれ変わりということは事実‘別人’なのでは?
貴方様が愛していたとしても、向こうが貴方様を愛している可能性は無いのではないかと」

百々目鬼[どどめき]が不意に、狐に問うた。
この妖は、後から来た者だ。

「……くくっ、そうじゃなぁ。
確かに、前世の記憶なんてものは勿論無い。
わしに対する思いも、な…」

「でしたら、貴方様は貴方様に相応しい妖と共になる方が宜しいかと思います。
人間の、ましてや男と結ばれたところで子を成すことも出来ない……そんなもの、共になる価値無しでしょう。一体なんの為に…んむっ!?」

そこまで発言して、百々目鬼の口をのっぺらぼうが塞いだ。
そして、何事かと百々目鬼が狐を見たところで、己が余計なことを言っていたことに気が付いた。

「お前たちは、もう少し考えてから発言をした方が良いのぉ。

……………次は無いぞ、百々目鬼」

光の無い、冷たい目。
百々目鬼の体から一気に汗が吹き出た。

「も……申し訳ございません…」

か細いその声に、隣にいたのっぺらぼうは心配そうに見守る。

「……ま、百々目鬼の言うことも分からんでもない。人間の男と結ばれること程に、‘何も生まない’ものは無いからのぉ。

でも、‘誰かに想いをやる’というのは……その寂しさすらも埋めてくれるものだ。
霊鬼、百々目鬼、皆に全てを理解しろとは言わぬ。

だが、わしの幻太郎に対する想いだけは理解して欲しい。頼む」

頭を下げる狐に、今度はその場にいた皆がザワついた。

肆→←弐



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ふぃっく - 一番気になるところで終わるのがウズウズします!!!!!!ぜひ続きを書いてください! (2023年4月16日 14時) (レス) @page38 id: 634615dde5 (このIDを非表示/違反報告)
心春(プロフ) - ロールロールさん» コメントありがとうございます。最近更新出来ずに申し訳ありません…。近々更新致します。あたたかいお言葉ありがとうございます。 (2020年4月5日 12時) (レス) id: 3f9e794f84 (このIDを非表示/違反報告)
ロールロール - はじめまして!とても楽しみに更新待ってます!体調管理に気をつけてください!応援してます。頑張ってください。 (2020年4月5日 0時) (レス) id: d8adda4a88 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:心春 | 作成日時:2020年1月12日 9時

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