陸ノ巻 月夜の朝 ページ3
人間の順応能力というのは凄まじい。
「おぉ、綺麗になったのぉ」
目の前に広がる光景。それは、綺麗になった玄関と異形の者たち。
けれど恐怖心は無く、そこにいることを受け入れられている。
もう一度言うが、人間の順応能力とは凄まじい。
「妖怪が、こんなに…」
「うおお!お前目が一つしかねぇぞ!?」
先程まで見えない側の人間だったこの男でさえも、もう慣れている。
いや、この男の場合は例外なのかもしれない。
「小官も手伝うと言ったのに、すまないな。皆に任せてしまって」
「!!!」
少年が海坊主に駆け寄り、何やら話しかけている。
「そうか、太次郎は優しいな」
「!?」
少年の頭を撫でる海坊主。撫でられた少年は顔を赤くし、俯いてしまった。
海坊主はそれでもお構い無しに撫で続ける。
「……ん!?何でこいつら、喋んねぇんだ?」
違和感を感じたのか、男が突然言い出した。
「喋っておるよ。けれど、言葉が分かるのはわしと海坊主だけじゃ」
「え、そうなのか!?」
「犬や猫の言葉が人に分からぬように、一部の妖怪の言葉は人に通じんのじゃ」
「一部の?」
「例外もおる。わしや海坊主、お前さんに取り憑いておった貧乏神など、力を持つものは‘見える者には言葉が通ずる’のじゃ」
「ほへー…」
何とも間抜けな顔をしているが、本当に理解出来たのだろうか。
俺は少し心配になった。
「ふむ、良い機会じゃ。
皆のことをお前さんらに紹介しよう」
そう言って狐は妖怪たちを1人ずつ紹介していく。
「まず右から。
まぁ、幻太郎は最早馴染みじゃなぁ。
座敷童子のお鈴じゃ。わしと海坊主を覗いて、ここにいる妖たちの中では河童の次に最年長じゃのぉ。
そしてその隣におるのが、同じ座敷童子の太次郎じゃ。五十年ほど前に社に来たばかりの子でのぉ。好奇心旺盛ゆえ、ちとうるさい。
この一際大きい奴は霊鬼。
見た目は怖いが、まぁ、妖怪と霊には優しい奴じゃ。人間に関しては……お前さんたちには手を出さんよ。
って、お前さんはいつまでわしの後ろに隠れておる。ほら、出てこんか。
……すまんのぉ、こやつは一つ目小僧。
見ての通り恥ずかしがり屋で、慣れとらんと直ぐに隠れる。
最後に、河童じゃ。
こやつはこの中でも海坊主の次に古株でのぉ。
口数は少ないが、頼りになる奴じゃ。
あ、こやつがいると家の水が綺麗になるぞ。良かったのぉ」
一部、恐ろしいことを聞いた気がしないでもないが、皆狐を慕っているのだと分かる。
「えっと、夢野幻太郎です。よろしくお願いします」
だからでは無いが、仲良く出来たら嬉しい。
89人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふぃっく - 一番気になるところで終わるのがウズウズします!!!!!!ぜひ続きを書いてください! (2023年4月16日 14時) (レス) @page38 id: 634615dde5 (このIDを非表示/違反報告)
心春(プロフ) - ロールロールさん» コメントありがとうございます。最近更新出来ずに申し訳ありません…。近々更新致します。あたたかいお言葉ありがとうございます。 (2020年4月5日 12時) (レス) id: 3f9e794f84 (このIDを非表示/違反報告)
ロールロール - はじめまして!とても楽しみに更新待ってます!体調管理に気をつけてください!応援してます。頑張ってください。 (2020年4月5日 0時) (レス) id: d8adda4a88 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:心春 | 作成日時:2020年1月12日 9時