真逆 3

【週刊誌編】3話 ページ14

銃兎が言った言葉に、二人は固まる。

｢わ、別れるって……そんなっ!｣

独歩が勢いよく立ち上がった。その表情は今にも泣きそうだ。

｢落ち着いて下さい。別れると言っても、離婚しろと言ってる訳ではありません。
この騒動が落ち着くまで、前までの生活に戻ってもらうだけです｣

｢前までの…｣

｢えぇ｣

独歩は座り込み、Aの顔を見る。

(やっと…今の生活にも慣れてきて、これからって時に…)

Aは独歩の視線に気が付いたのか、その手を握り、笑顔を見せる。

｢……独歩、ごめんね｣

｢え?｣

｢一二三さん、明日独歩の荷物を持って来ます。今日は……俺一人で帰るよ｣

｢A!?｣

｢……賢明な判断です｣

｢……銃兎、家まで送ってくれるか｣

｢ああ｣

独歩の手を離し、Aは銃兎と共にこの部屋から出ていこうとする。
独歩はそんなAの腕を掴む。

｢A……俺も、帰る｣

腕を掴む手も、声も震えている独歩。

｢………離して、独歩｣

｢…嫌だ｣

｢…っ離せよ!!｣

Aは強引に振りほどき、怒鳴る。
まさかそんな風にされるとは思っていなかった独歩は、驚きのあまり固まる。

Aも、やってしまったと言うような表情をしたが、すぐに顔を隠すように俯いた。

｢……‘出会う前の生活’に、戻るだけだろ?
そんな顔をしなくても、大丈夫だよ｣

｢出会う前って……そんな…｣

我慢できずに涙が流れる。

Aはそれを直ぐにでも止めてあげたい衝動に駆られたが、ぐっと堪えて銃兎の隣に行く。

｢帰ろう｣

｢……いいのか?｣

｢ああ……ここで涙を拭ったら、連れて帰りたくなる。
そうなれば、更に迷惑をかける…｣

｢そうか…｣

銃兎は一二三と独歩に一礼し、Aは何も言わずに部屋から出た。
ガチャンとドアの閉まる音が響く。

｢独歩、その……｣

一二三が独歩に声をかけようとするが、独歩はドアを見たまま動かない。

｢……っ…ごめん、ただ二人を心配して……まさか、こんな風になるなんて…俺……｣

｢……一二三は、何も悪くない｣

｢独歩…｣

｢………俺の部屋、そのまんまなんだっけ…｣

｢う、うん!物が減ったくらいで、他はいじってねーよ!｣

｢そっか……、すこし…寝てくる｣

独歩は一二三の横を通り過ぎ、自室だった部屋へと入っていった。

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