大切な人の席【江戸川乱歩】

1席 ページ17

乱歩side

一目散にAの居るであろう所へ向かう

「居た…」

路地裏に蹲りながら息を整えている

近くに行き、隣にしゃがんでみる

拒まれてない…厭だったらAの方から避けられる

「ここに居ると不審がられるよ。それにマフィアも居るかもだ。公園行かない？」

「……ん」

立ちにくそうにしているAの手を掴んで立たせる

近くに静かな公園があった筈

そこにだったら猫もいるし休まる

ゆっくりAが疲れない程度で歩いて公園へ向かった

何時もなら15分くらいで着く公園が、今日は25分かかった

近くのベンチに座り、どちらも無言で向こう側にいた猫を見ていた

「肩貸すよ」

「善いの？厭がりそうなのに」

「Aだけね。早くしないと貸さないよ」

僕の右肩が重くなる

髪の毛で少し擽ったい

直ぐ傍からAの溜め息が聞こえる

ある程度は落ち着いた様だ

帰った方がいいだろうけど、もっとこうしていたいし

未だいいか

「眠い」

「此処で寝たら置いていくよ」

「えっ」

「嘘に決まってるでしょ？置いてかない」

襲われたら困る

急にAが手を重ねてくる

「急に何？」

「何も無い」

「ふぅん」

少し顔が赤い

無意識にこうして、はずがしがってるな

可愛いからいいけど

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