からっぽ失敬！」２ ページ3
(続きです。)
知っていたよ
おれが知っていたことに対して面白くなさそうな顔をして続ける
「まぁ、月永は勘がいいもんな。
なら俺の気持ち悪い部分だってすべて知って横にいてくれたんだろ
ありがとう」
気持ち悪くなんかない、そう言いたかった
「月永、お前はこれから死んで生まれ変わるんだ
ゆっくりだが時は変わる
すべて変わってしまうわけじゃない
お前も少しずつ変わって、お前の時間をすすめなきゃならない
ぜ〜んぶ終わりだ月永！」
嫌なんだ。すべて
お前がいなくなるのも、おれが変わるのも
「嫌なんかじゃない。恐れているんだ
未来の自分に。
それだけ未来の自分が偉大だって事だから、安心して時に身を委ねろ
確かに俺はこれからもっとしたに堕ちて、
醜くするために火に炙られてくる。
踊れなくなるように針に身を裂かれてくる。
歌えなくなるように舌を抜かれてくる
きっと俺は地獄に堕ちる。
俺も怖い、恐れている。
未来の自分は死んでしまったから、偉大な自分なんていないから嫌だ
でもお前は違うだろ月永。
贅沢者はそのまま身を委ねとけ
それが俺の望みで希望だ」
お前は地獄なんていけない。
お前は今も偉大で、きっと未来もある
そう言いたかったけど、死という事実のもとではそんなことは口が裂けても言えなかった。
「俺もそろそろ疲れたから、寝させてよ」
眠るということは本当の死を意味するのだろう
アイツは墓参りも時にはしてくれよ、とおどけたように笑う
ミーンミーン
うるさい空気だけがおれを包む
あの日から数ヵ月経った
今でもアイツが横にいることを願っている
それ以外で動くことなんて出来なかった
墓で眠る今は天国にいるアイツに
未だ引き留められている
まだ今の未熟なおれは死ねてない
アイツの横にいたおれはまだおれの中にいる
そんなおれはずっとからっぽだ
紙とペンを用意する
吐き気と震えだけのためだけにおれの労力は使われ、
眠気が襲ってきた
おれはそんな三大欲求のひとつに身を任せまぶたを閉じる
……？ありゃ、ここどこだ
そんなときに後ろから視線を感じた
どうやらずっと後ろで見守っていたようだ
おれは子供じゃない！
子供と言えば………
と子供というキーワードで引っ掛かったアイツの事をまたやめることなく
ぐるぐるぐるぐる考える
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作者名：欲望野郎 | 作成日時：2021年12月20日 20時
