【金カム】愛で満たして【短編集】 (ページ2)

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「アンタ、名前は？」

「 …A、田中Aです。あの、あなたは？」

結局二人で、クラブを抜け出してきた。
どちらからとも言わず、成り行きで私達は外へ出た。

夜風はやけに冷たくて、でも体は熱いままだからなんとなく心地が良かったのを覚えてる。

数歩前を歩く背中を見て、まださっきのドキドキがおさまらない。
あんなキザな誘われ方したの初めてだ。

「俺は、尾形百之助。ここ、いつも来てるのか。」

「いえ、今日が初めてでした。その…、彼氏に振られちゃったので友達が連れてきてくれたんです。」

「 …振られた、ねえ。」

「すみません、さっき会ったばかりの人に辛気臭い話ししちゃって…。」

「いや、別に。その話の続き、聞かせてくれよ。アンタの話を酒の肴にして一杯頂こうぜ。」

「私、…つまらない女だからお酒が進むほど面白い話なんかありませんよ。」

そう言って笑って誤魔化せば、尾形さんは立ち止まって振り返る。
彼は無言で私の腰を抱いて、足早に歩き出した。

「え、ちょ、」

「つまらない？…面白いかは俺が決めてやる。さ、二人だけで楽しもうぜ。」

「どこへ行かれるんですか。」

「二人だけになれるとこなんて決まってんだろ。」

そう言って妖艶に笑った尾形さんに、私はもうお酒の勢いに任せてしまえと彼の歩みに合わせた。

腰に当たる彼の手の温度が妙に熱くて、頭がパンクしちゃいそうだった。

「俺に触れられるたび、そんな顔してたら今夜は持たないかもな。」

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