【金カム】愛で満たして【短編集】 (ページ1)

今日:7 hit、昨日:35 hit、合計:8,108 hit

お酒にまみれて【尾形百之助】ページ1

.

?×尾形

.

アルコールの香りがフロアに充満している。週末のナイトクラブは人が多くて、酔いはお酒だけじゃなくて人のせいもあるのかもしれない。

露出の多い服で異性に身を寄せ合う人の群れを、吹き抜けの2階から見下ろした。

心臓にまで響いてきそうな重低音が、もう煩く感じないのはだいぶ酔いが回っているからだろうか。

「 …う、飲みすぎたかも。」

カウンターに一人で座る私の目の前には空になったグラス。もう何杯目かわからないくらい飲んだと思う。

「 …お姉さん、一人？」

「 …え？」

声をかけてきたのはスーツを着崩した男性。私はまだ答えていないのに、もう横に腰掛けている。

これは所謂ナンパってやつ？

「さっきからずっとここにいるよね？寂しいんだったら俺が相手してあげるよ。」

「 …いや、連れがいて。」

「ふーん？男？」

頬杖をついて探るような目つきで私を見る彼は、やり手の顔だ。
こんな所に来ること自体初めてでどうしてよいかわからず、バーテンダーの方へと視線を向けるが、遠くて気づかれない。

「 …そうじゃ、ないですけど。」

「じゃあいいじゃん、ね、俺と飲もうよ。バーテンさん、注文いい？」

どうしよう、このままこの人居座るつもりじゃん。

内心焦りながら、カウンターに置いていたスマホに手を伸ばそうとしたとき。

「 …なに？連れ呼ぶわけ？」

「ちがっ、」

「 …嫌がってますよ、お兄さん。」

「 …！」

「誰だよアンタ。」

ナンパ男の肩に手を置いて、彼を制止してくれたのはツーブロックをオールバックにした男性だった。

「 …ここのオーナーですけど、何か？」

「！ちっ、どいつもこいつもウゼェな。」

捨て台詞を残して私の横から去っていったナンパ男は、颯爽とこのフロアから姿を消した。
私はすぐに立ち上がって、助けてくれた男性の方へと向き直る。

「 …あの、ありがとうございました。オーナーさんなんですか？」

「いや？俺はただの客だ。」

「え、」

崩れかけた髪のひと束を押さえつけるように、髪を撫でた男性は大人の魅力を醸し出していた。
私の顔はひどくほてっていることだろう。

「アンタがよければ、連れが戻ってくるまでそばに居てやろうか。」

.