昼間に呑む酒は一味違う441 ページ41
白く霞んだ視界の中、鳳仙はいつぞやの記憶が脳裏に浮かんだ。
「_____ねぇねぇおじちゃん」
まだ幼く、女という魅力もない餓鬼の目はまるで澄んだ青空のようだった。
「なんでこんなに晴れてるのに傘なんて差しているの」
澄んだ瞳にじっと見つめられた。
雲一つない青空の下で少女は不思議そうに呟いた。
連れていかれるその少女は去り際また呟いた。
「かわいそう、こんな綺麗な空を眺めることもできないなんて」
鳳仙は指一つ動かせれなかった。
まるで今のように。渇ききった体はヒビが走り、崩れていく。
少女の目は純粋を形にしたものだった。
地下に隠れ、憎き太陽から遠ざかり続けたある日。
大人も子供も恐れる自分の前にひょっこりと現れ、少女は叫んだ。
「おじちゃんだめだよ!!!お日様と喧嘩なんてしたら!!!」
少女が罰せられていた。
「お、おじちゃん」
一枚の絵にお世辞にも上手いとは言えない、太陽。
雲に隠れていない、大きな太陽。
「今は、それで我慢してね……。でもいつかきっと」
青い瞳が鳳仙を捉えた。
鼻血や頬が腫れても、浮かんでいるのは花のような笑み。
「私がおじちゃんとお日様を仲直りさせてあげるから」
売り物にしようとしている男に媚びを売る少女。
自身のみが傷ついてもいつも、鳳仙に太陽を嫌わないで、と口にしていた。
______それが、日輪だった。
「我が天敵よ」
先程まで動かせれなかった腕を天敵にへと伸ばした。
目が霞み、肌が焦がれ、剥がれ落ちていく。
長年目にしなかった太陽は以前と変わらず、夜王を見下ろし、燦燦と輝いていた。
それがなんとも忌々しく、だが。
「なんと美しい姿よ」
吉原を包み込んだ太陽に自然と零れた言葉だった。
「夜王にない物、それは
落ち着いた声色が鳳仙に落とされた。
番傘を差し、太陽と共に見下ろす神威。
「旦那、貴方は太陽のせいで渇いていたんじゃない。
貴方は太陽がないことに渇いていたんだ」
誰よりも太陽を疎み、憎みながらも鳳仙は羨み焦がれていた。夜兎が決して手に入れることはできない太陽に。
数々の戦場に降り立った獣はずっと太陽の下を焦がれていたのだ。
淡々と、鳳仙に浴びせていく。
「……神威、お前はわしと同じだ」
冷たい戦場で戦う術しか知らない幼子よ。
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月見ソウ(プロフ) - 萩月さん» 萩月さん、コメントありがとうございます!遅れてしまってすみません。一気に読んでくださったこと、可愛いと感じてもらえてとても嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (1月13日 6時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
萩月(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました、不器用ながらも喜杏ちゃんを可愛がる銀さんや甘えたな年頃の喜杏ちゃん等、ニヤケが止まりません!続きを楽しみにしてます。年明け早々色々ありましたが作者さんも無理せず頑張ってください、これからも応援しております。 (1月3日 15時) (レス) id: 18ce4c7edf (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - 蛙好きさん» 蛙好きさん、コメントありがとうございます!一気に見てくれたんですか!?嬉しいです、ありがとうございます。一月下旬当たりにここに戻りたいと思ってるので、申し訳ないですがもう少しお待ちください。これからもよろしくお願いします。 (12月26日 16時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
蛙好き(プロフ) - 夜中一気に見ちゃいました、続き楽しみにしています (12月23日 2時) (レス) @page46 id: 7bb3646af7 (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - 甚嘉さん» 甚嘉さん、コメントありがとうございます!成長は特に意識して買いてるので感じてもらえて凄く嬉しいです。少し更新速度落ちてますが、頑張ります!よろしくおねがいします。 (9月25日 23時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見ソウ | 作成日時:2023年9月4日 0時