吉原に太陽を437 ページ37
喜杏達が入った部屋は空き室で、少し埃臭かった。
踏み入れた時に埃が舞い、軽く咳き込む。
まずは神楽の折れた右腕を処置しなければならない。先程、新八が蹴飛ばした木を添え木にしたら丁度いい。
後は、それを支えるための布。包帯があるのが一番なのだが。
「喜杏ちゃん、座ってていいよ。僕探すよ、君も怪我は酷いんだから」
「いい、大丈夫」
見た目より酷くはないのだ。殴られた腹ももう既に痛みは感じない。
頭の傷も皮膚の薄い部分を切ってしまっただけで出血がひどかったが、今は止まっている。
「いいから、ね」
「っ……」
突如喜杏の体は抱き上げられた。
神楽の横に降ろされると、新八はすぐさま探し始めた。
「び、っくりした」
「……生意気アルな、新八の癖に」
そう神楽も笑いながら言うから、大人しく新八を待つことに。
「本当に大丈夫アルか」
「うん、襖があったおかげかもしれない」
阿伏兎の攻撃が来る、という認知より無意識に後ろに跳んでいた。
ほとんど間に合ってはないので、意味もなかったかもしれないが現状無事である。
ただ、跳べた理由も、あのまま掴まれたままでは恐らく死んでいた。
喜杏は懐刀に触れ、取り出した。
阿伏兎によって粉々になってしまった懐刀。
「……それ元に戻すこと出来ないアルか」
「……わからない。でも、多分」
一度折れた刃はくっつけることは不可能である。
しかし、折れた物を一本に打ち直すことは可能だそうだが、欠片一つ残っていない場合、この懐刀を使うことはできないのではないか。
「喜杏ちゃん、一度鉄子さんの所に相談行ってみようよ」
救急箱を見つけてきた新八は、神楽の傍にしゃがみこんで言った。
確かに、素人がどうこう言うより鉄子に聞く方が望みがあるかもしれない。
「そうする」
「喜杏ちゃんも傷見せて」
「ン」
頭の傷だけガーゼで押さえ、包帯を巻かれた。
「よし、準備いいアルか」
「うん!!!」
「うん」
落ち込むのは一先ず全て後回し。今は私達が次やるべきことを全力で完遂するだけだ。
暗かった部屋から抜け出し、喜杏達は再び騒ぎのある方へ走り出した。
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月見ソウ(プロフ) - 萩月さん» 萩月さん、コメントありがとうございます!遅れてしまってすみません。一気に読んでくださったこと、可愛いと感じてもらえてとても嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (1月13日 6時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
萩月(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました、不器用ながらも喜杏ちゃんを可愛がる銀さんや甘えたな年頃の喜杏ちゃん等、ニヤケが止まりません!続きを楽しみにしてます。年明け早々色々ありましたが作者さんも無理せず頑張ってください、これからも応援しております。 (1月3日 15時) (レス) id: 18ce4c7edf (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - 蛙好きさん» 蛙好きさん、コメントありがとうございます!一気に見てくれたんですか!?嬉しいです、ありがとうございます。一月下旬当たりにここに戻りたいと思ってるので、申し訳ないですがもう少しお待ちください。これからもよろしくお願いします。 (12月26日 16時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
蛙好き(プロフ) - 夜中一気に見ちゃいました、続き楽しみにしています (12月23日 2時) (レス) @page46 id: 7bb3646af7 (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - 甚嘉さん» 甚嘉さん、コメントありがとうございます!成長は特に意識して買いてるので感じてもらえて凄く嬉しいです。少し更新速度落ちてますが、頑張ります!よろしくおねがいします。 (9月25日 23時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見ソウ | 作成日時:2023年9月4日 0時