貴方の傍に-9-【銀魂】

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「碌に戦場に出たこともない餓鬼が俺に食らいついてくるとは」

場数。

神楽と阿伏兎の決定的な違いだった。
しかし、それでも食らいついてくる姿に阿伏兎は笑いが止まらない。
末恐ろしい餓鬼だと思った。

場数を踏んでいなくてもこの闘争本能。星海坊主、いや。

「兄貴譲りってわけか」

「あいつと一緒にするなヨ」

間髪入れずに否定する神楽に阿伏兎は口元を緩めた。
このままでは宝の持ち腐れだと思ったのだ。

「こんなぬるま湯に浸かってたらその一級品の才能、潰れちまうぜ」

まさしく彼女は夜兎そのもの。
きっとそれは転がっている喜杏達(餓鬼共)も嫌でも理解したはず。

神楽は地面を踏み込み、阿伏兎に一発蹴りを入れた。

「お前らと一緒にするなと言ってるアル。夜兎の血に流され、戦場を彷徨うだけのお前らと」

神楽の視界の端に喜杏や新八、脳裏には銀時の姿が掠めた。

「私は、自分の戦場は自分で決める。



“血”ではなく、“魂(こころ)”で」

闘争という欲求に負けるものか。
銀時達と出会って決心したのだ。そして理解した。夜兎がどうして一人ぼっちだったのか。

戦い続けて何が残る。
恨みだけだ。復讐心だけだ。その先には何も残らない。

地球に来て、銀時に出会い、この力で色んな人を助けてきた。
そしたら、いつの間にか友達が沢山できた。

時には新八達の背中を押すために叩いたこともある。
この両手で、腕で喜杏を抱きしめたら、照れても腕を回してくれるようになった。

だから、決めた。
私が今この場に立つ理由。
それは＿＿＿＿＿。

「自分の護りたいものの為に立つアル。その邪魔をするというのなら」

再び強く地面を踏み込んだ。

「同族だろうが、兄貴だろうがっ


ぶっ潰すアル!!!」

神楽の拳が阿伏兎の拳とぶつかり合った。
再び始まる闘い。

何度でも拳を、蹴りを食らわす。

またもう一度、陽の下で笑い合う為に。


気を緩めるな。今ここで私が踏ん張るんだ。

そして漸く、阿伏兎の頬に食らわすことが出来たと思った。

「ッ!!!」

違う。食らわしたのではない。
敵はわざと食らったのだ。

「さてここで問題だ」

一番腰の入った拳を入れた。それでも目の前の男はピクリとも動かない。

「倒す拳と殺す拳。一体どちらが重いかな」

油断したつもりもなかった。

「正解は」

突如襲う痛み。阿伏兎の蹴りが神楽の腹に入った。
胃の中身が全て吐き出されるような感覚。

「殺す蹴りだ」

今までの蹴りとは段違いであった。

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