親の心子知らず412 ページ12
月詠が喜杏達に投げた苦無は小細工がされていたのだ。
苦無の先にはシリコンが付けられており、誰一人傷一つ付けられることなく無事だったというわけである。
月詠についてこい、と言われ、銀時は大人しくその背中を追いかけた。
華やかな声は遠ざかっていき、着いた先は吉原を支える一つの巨大なパイプの上だった。
また暫くその上を進んでいくと、月詠は一部の鉄板をゆっくりと持ち上げた。
「門は見張りがいる。ここを通ってゆくがいい。一日半はかかるがいずれ外に出られる」
さっさと逃げろ。月詠は煙管を吹いた。
死の偽造、そして喜杏達を次は逃がすという、明らかな裏切り行為。百華の頭が何故、芝居を打ったのか。
「わっちは吉原の番人。吉原で騒ぎを起こす奴は消す。
それだけでありんす」
番人と言う言葉は伊達じゃない。
遊女を脅かす者、攫おうとする者、または夜逃げする遊女も遠慮なく裁いてきた。
その数はもう既に数えきれないほどである。
しかし、そう言われても晴太はこの吉原から地上に向かう気なんてなかった。
神楽や喜杏が母ちゃんに会う為に背中を押してくれた。
どれだけこの吉原で一人の女性に会うことが難しく、危険だと知りながら、依頼として引き受けてくれると言った。
そうだ、おいらはただ。
「
「だったら尚更帰るが良い」
月詠の言葉に銀時達は目を見開く。
「わっちにぬしらを逃がせと頼んだのは誰でもない。
その日輪じゃ」
日輪が晴太を逃がすように月詠に頼んだ。つまり、日輪は晴太の容姿も存在も把握していることになる。
それでも自分と会わせないように頼んだ理由が分からなかった。
その答えは簡単だった。
先程月詠が様付けをしていた“鳳仙”と言う男。
吉原の楼主の名であり、鳳仙は晴太と日輪を接触させることを恐れていた。
つまり、晴太が吉原いる限り、命は狙われ続けるということを指している。
「なんで⁉」
その言葉に神楽は声を上げた。
「子供とマミーが会うのを邪魔だてされる義理はないネ!!!」
「晴太はただ……会いに来ただけなの。殺される義理もない」
謎が多い。神楽の叫びも喜杏の言葉も何一つ間違っていない筈なのに。
晴太は手を握りしめた。伸ばした手の先はもう闇の中のように暗かった。
「……日輪が逃げるかもしれんからじゃ」
月詠は煙管から口を放し、一人の女、そして八年前の出来事を話し出した。
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月見ソウ(プロフ) - 萩月さん» 萩月さん、コメントありがとうございます!遅れてしまってすみません。一気に読んでくださったこと、可愛いと感じてもらえてとても嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (1月13日 6時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
萩月(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました、不器用ながらも喜杏ちゃんを可愛がる銀さんや甘えたな年頃の喜杏ちゃん等、ニヤケが止まりません!続きを楽しみにしてます。年明け早々色々ありましたが作者さんも無理せず頑張ってください、これからも応援しております。 (1月3日 15時) (レス) id: 18ce4c7edf (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - 蛙好きさん» 蛙好きさん、コメントありがとうございます!一気に見てくれたんですか!?嬉しいです、ありがとうございます。一月下旬当たりにここに戻りたいと思ってるので、申し訳ないですがもう少しお待ちください。これからもよろしくお願いします。 (12月26日 16時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
蛙好き(プロフ) - 夜中一気に見ちゃいました、続き楽しみにしています (12月23日 2時) (レス) @page46 id: 7bb3646af7 (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - 甚嘉さん» 甚嘉さん、コメントありがとうございます!成長は特に意識して買いてるので感じてもらえて凄く嬉しいです。少し更新速度落ちてますが、頑張ります!よろしくおねがいします。 (9月25日 23時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見ソウ | 作成日時:2023年9月4日 0時